雑学
望遠鏡の性能は倍率でなく口径で決る
どんな安物の望遠鏡でも、単に倍率を上げるだけならいくらでも上げられるが、
倍率を上げれば上げるほど、像が暗くなり、また像の輪郭がぼやけてしまって、ちっとも見やすくならない。
見やすくするには、光を集めないといけないし、像の輪郭をシャープにしないといけない。
そして、光をどれくらい集めることができるか、像の輪郭をどれくらいシャープにできるかは、
口径がどれだけ大きいかに掛かっているのだ。
口径が小さいと、光をたくさん集めることができないのは想像できると思うが、実は、それだけではなく、
口径が小さいと、レンズや主鏡の精度をどんなに上げても、像の輪郭はシャープにならないのだ。
A
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. B . . . .
___________________________________________ ← レンズ
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| . | ← 点Aから発せられて広がった光は
C レンズのどこを通っても点Cに集まる。
上の図は、望遠鏡の外と入口部分の光の走り方を表したものである。
点Aを発して広がった光は、レンズのどこを通っても、また一点に集まる。
このことは、点Aから発せられた光に限らず、どの点から発せられた光についても、同様である。
(ただし、どの点から発せられたかによって、集まる位置は異なる)
ところが、実際には、完全には一点に集まらない。
上の図では、光の筋BCは完全な線のように描かれているが、実際には、点Bから少しずつ広がり始めるのだ。
(色の違いによる屈折率の違いのことではない。今回は、色の違いによる屈折率の違いはないとして話を進める)
点A以外から発せられた光の分も混ぜて描けば、点Bから少しずつ広がり始めるのは当たり前だが、
そういう意味ではなく、光の筋ABの分だけが、向きを変えられた瞬間に、広がり始めるという意味である。
このことは、点Bを通った光に限らず、レンズのどこを通った光についても、同様である。
これは、回折と呼ばれる現象で、光が波の性質をもっている以上、絶対に避けられないことなのだ。
そういうわけで、点Cには、少し広がってしまったもの同士が集まることになる。
少し広がってしまったもの同士が集まると、それらが干渉し合って、同心円状の模様ができる。
その模様は、中心の円盤が最も明るく、その隣の環が次に明るく、外側の環ほど暗くなって行く。
そして、光が、より広い範囲から集まるほど、すなわち、レンズの口径が大きければ大きいほど、
中心の円盤や環が全体的に小さくなり、また、中心の円盤と環の明暗の差が大きくなって、
像の輪郭が、よりシャープになるのだ。
なぜそうなるかの詳しい説明は略すが、
光がさらに浅い角度から重なり合うと、周りがさらに相殺されて行く感じだと思えば、だいたい合っている。
なお、これらのことは、光をレンズで屈折させる代わりに鏡で反射させる場合についても、同様である。
もちろん、いくら口径が大きくても、レンズや主鏡の精度が低ければ、ぼやけ方は当然ひどい。
同じ大口径でもいろいろな値段のものがあるが、
安いものには安い理由があり、高いものにはそれに見合っただけの値打ちがある。
世界で最も口径の大きい望遠鏡は、ハワイにある「すばる」で、口径が8mもある。
8mもあるレンズを作るのは技術的に無理なので、光を集めるのに鏡が使われている。
主鏡が8mもあると、向きを変える度に鏡自身の重さで鏡の形が歪んでしまうので、
鏡の後を 261本の動力付の棒で支えて、それを1つ1つコンピュータで常に微調整しながら精度を維持している。
主鏡がここまで大きいと、そんな大袈裟なことをしないといけないのだ。
しかしまあ、そんなお化け望遠鏡で見るとどんなふうに見えるのか、一度見てみたいものですねえ (^_^)