雑学

猫はなぜ空中で向きを変えられるの?

昔、「新・巨人の星」という漫画があった。
主人公の星飛雄馬が2塁に盗塁するとき、
2塁の直前でジャンプしてスパイクを2塁手に向けてスピンしながら降り来るので、
2塁手はスパイクが危なくてタッチできない、という無茶苦茶な漫画だった。
漫画の中では、スクリュー・スピン・スライディングと呼んでいた。
テレビアニメでも放映されていたが、その場面、よーく見ると何か不自然だ。
星飛雄馬はジャンプした時点では全くスピンしていない。
そして、ジャンプの頂点で身体をひねると、
空中で足場がないにもかかわらず、いきなりもの凄いスピンを始めるのだ。
そんなことって、あるのだろうか?

そのことを考えたとき、ある疑問が沸く。

猫は、腹を上に向けて落ち始めても、空中で180°回転して、必ず腹を下に向けて着地する。
落ち始める時点で全く回転していない場合でも、必ず空中で身体全体の向きを変えているように見える。
しかし、足場のない空中で身体全体の向きを変えるなんて、本当にできるのだろうか?

実は、できるのである。

猫は身体をひねる動作を上手く組み合せて、身体全体の向きを変えている。
そこで、身体を前半分と後半分に分け、落ち始めてから着地するまでの腹の向きに注目して説明する。
すると、こんな感じになる。

  (1) 前半分と後半分は、ともに真上を向いている。
  (2) 前足を縮め、後足を広げて、身体を 200°くらいひねる。
  (3) ひねっている最中の回転速度は、前半分の方が遥かに速いので、
      ひねる動作で得られる回転量は、前半分が 190°くらい、後半分が −10°くらいになる。
      その結果、前半分は 真上+190°くらいの方向を向き、後半分は 真上−10°くらいの方向を向く。
  (4) 前足を広げ、後足を縮めて、身体の捻りを戻す。(2)のときとは逆向きに回転する。
  (5) ひねりを戻す最中の回転速度は、後半分の方が遥かに速いので、
      ひねりを戻す動作で得られる回転量は、前半分が −10°くらい、後半分が 190°くらいになる。
      その結果、前半分は 真上+180°くらいの方向を向き、後半分も 真上+180°くらいの方向を向く。
      つまり、前半分も後半分も、だいたい真下を向く。

(3)で、回転速度はなぜ前半分の方が遥かに速いのか疑問に思うかもしれないが、
前半分は足を縮めて重量が回転軸の近くに集まっているので、
足を広げて重量が広がっている後半分よりも、回転しやすいのだ。
フィギュア・スケートで回転中に手を縮めて行くと回転速度が速くなって行く場面を思い出していただければ
納得できると思う。
(5)も同じ理由だ。

そういうわけで、足場のない空中であっても、身体全体の向きを変えることはできるのである。

しかしまあ、(1)〜(5)のことを訓練を受けたこともないのにできるなんて、本能とはほんとに凄いものですねえ (^_^)


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