戻る

前ページ   次ページ

和書 1094378 (34)



巨怪伝〈上〉―正力松太郎と影武者たちの一世紀 (文春文庫)
販売元: 文藝春秋

Amazonのカスタマーレビュー(口コミ)

 本書執筆の基本コンセプトは、文中に繰り返し明確に示されている。まずプロローグに「正力の八十四年の人生は、日本の大衆社会の趨勢とみごとなほど重なる」「その全体劇は、同時に、大衆の原像が遊弋する昭和という時代を映し出す格好のジオラマ像ともなっている」(上p16)。あるいは「正力の野望の炉心には、大衆の欲望がとりこまれつづけた」「刹那的な欲望と消費文明に狂奔した昭和という時代(中略)の基層に流れる大衆の情念と非合理的な精神をすくいとったという意味あいにおいて、正力はまさに稀代の興行師であり、昭和の化身的存在だった」(下p408)。
 巻末近くに「日本近現代史と個人史とを大衆に媒介してシンクロさせたその生き方こそ、数々の事業を生み出し、棺を蓋うてもなお磁力を失わない、正力の力の真の源泉だった」(下p427)。そしてあとがきで「この本は、“庶民”というものが、いかにして“大衆”というものに変貌したのか、ということが、大きなモチーフとなっている」(下p435)。
 ならば本書タイトルの「巨怪」とは、日本近代に現れた「大衆」でもあるだろう。米価沸騰に憤激して荒れ狂い(米騒動)、関東大震災では流言蜚語に踊らされて「異分子」を虐殺する。戦争報道に熱狂し、しかし戦後はマッカーサーを崇拝し、ミッチー・ブームに熱狂し、ウラン鉱に一攫千金の夢を追い、天覧試合サヨナラホームランによって長嶋を永遠のヒーローに祀り上げる。
(文庫本下巻レビューに続く)





巨怪伝〈下〉―正力松太郎と影武者たちの一世紀 (文春文庫)
販売元: 文藝春秋

Amazonのカスタマーレビュー(口コミ)

(文庫本上巻レビューより続く)
 正力がこの大衆というモンスターを乗りこなし得た秘密を、著者はその「没理想」「没理念」に見る(上p239、p319)。もちろん、これは大衆の定義でもある。正力は大衆そのものではないにしろ、「刹那的な欲望の水路に大衆を導き込む運河の設計者」(上p191)として、大衆と一体だった。
 正力は周囲に多くの有能な「影武者」たちを従え、彼らの夢や理想を喰らって輝いた。そこには「夢をもった者はその夢を実現できず、夢をもたなかった者だけが、他人の夢を横どりできる、という苦い構図」(上p409)がある。ただし「その実現されたその夢は、いつも形骸化された夢、夢の抜け殻ともいうべきものだった」(上p345)。
 著者は本作の発表後、渡邉恒雄伝の執筆を勧められて腹を立てたという噂を耳にした。それはそうだろう。この著者の関心は、まっすぐに「日本近代の肖像を描くこと」に向かっている。対して、著者が渡邉の矮小さを軽蔑していることは、本書中の記述からも明らかではないか。著者が次のテーマに選んだのは、大衆化する日本社会の中で「真の庶民の姿」を捜し求めることに生涯をかけ、時には捏造に手を貸しさえした宮本常一だった。そこに著者の求める「解」があったかどうか、それは疑わしいと私は考えるけれども…




巨怪伝―正力松太郎と影武者たちの一世紀
販売元: 文藝春秋

Amazonのカスタマーレビュー(口コミ)

私が読んだ最高の伝記の一つ。たくさんの賞賛の言葉が多数の読者から寄せられているので敢えて不満を述べる。正力の異常なエネルギー、バイタリティーは特に方向性はなく、一種の病気のようなものと本の途中まではされてきたのだが選挙に出るにあたって「総理になるのが生涯の夢だ」とぽつりと述べたという。これは重要な証言だ。だったら彼の活動(警視庁入りも読売買収も球団も)はすべてこの計画あってのこと、その布石だったと解釈しなおせるからだ。そして総理への道が絶たれて生涯の夢が絶たれた時、なんらかの感慨があってしかるべきだがそれが書かれていない。最後に筆者は正力の異常なバイタリティーは彼が故郷富山の正力家の前に広がる風景を見て育ったせいなのではないかと結ぶが、これは感傷とこじつけが過ぎるというものだ。映画ならこんな終わりもありだが。これは本格的な評伝なのだ。画竜点睛を欠くとはこのこと。




巨人たちの握手―衝撃のカー・ウォーズ
販売元: 日経

Amazonのカスタマーレビュー(口コミ)






恐怖の2時間18分
販売元: 文藝春秋

Amazonのカスタマーレビュー(口コミ)

著者である、柳田邦男の他の本について、あまり問題無いと考えるますが、この本だけはちょっと別格になります。まず、内容においては原発事故の代表であるスリーマイル島原発についての検証が行われています。内容も新聞方法の範囲で収まる無難な本にはなっていますが、他の著者の本を読まれた方は奇異な感触を覚えるのでは(私もその一人でした)。とゆうのは、この本の出た後に他の著者により明らかにされた問題を、当時の著者であれば書けたのでは無いかとの思えてならないのです。確かに、この本を読んで著者の指摘する問題点は大いに参考になる貴重な指摘であろうと思われますが、「何か奥歯に引っかかっている」ような筆者のもどかしさを感じる本です。




逆転―アメリカ支配下・沖縄の陪審裁判 (文春文庫)
販売元: 文藝春秋

Amazonのカスタマーレビュー(口コミ)






業界紙諸君!
販売元: 中央公論社

Amazonのカスタマーレビュー(口コミ)

この本が出版されたのは昭和62年(1987年)で今から20年以上前になる。その後業界紙の世界を扱った本が出ないので現在はどうなっているのか見当がつかないが、平成12年(2000年)にちくま文庫からこの本が復刊しているところを見ると、業界紙を扱った本としてはかなり貴重なものであるのだろう。

この本では12の業界を載せている。ジャンルはホントに様々で金融、航空・防衛から、こんにゃく、音楽まで硬軟いろいろ取り混ぜてある。もちろん面白いのは業界紙そのものより業界紙にまつわる人間たちである。社会の日の当たるところを歩いてきた人間ではなく、裏のある、一筋縄ではいかない、したたかな人間が何人も登場する。取材お断り、履歴はうそばっかり、自分勝手な欲望の塊みたいな御仁たち。葬儀業界紙をいろどる人々の人間ドラマは圧巻。最後の書評紙では女優吉永小百合さんのお父様が関係していて、小百合さんの芸能界デビューのきっかけが紹介されている。




銀座の達人たち
販売元: 新潮社

Amazonのカスタマーレビュー(口コミ)






空白の天気図 (新潮文庫 や 8-1)
販売元: 新潮社

Amazonのカスタマーレビュー(口コミ)

ノンフィクションの価値は切り口で左右されるといえるが,本書が持つ切り口ほど鮮やかなものはなかなか見当たらない.通常,広島-原爆とくれば情緒的に悲惨を語り,反戦平和を煽るものになりがちだが,本書では「理系の職場」である天文台を通して,あくまでも理知的な語り口で(科学的技術的観点を中心にして)原爆投下当時の広島の状況を叙述するという,敢えて言えば奇想天外な方法を採っている.それでいてそこには明示的ではなくとも確固とした人間の物語も描かれている.これは自分のようなテクノロジー系の人間に平和の尊さを語るには非常に説得力がある方法ではないだろうか.それにしても,「ガン回廊の朝」でもそうだが,実際に聞いたことがあるはずも無い会話を創作・再構成する柳田邦男の技量はたいしたものだと思う.




空白の天気図
販売元: 新潮社

Amazonのカスタマーレビュー(口コミ)




前ページ   次ページ

戻る

仮想世界 - シューティング/レース/電車ゲーム フライトシミュレータ