もし私が死んだとしても、その「いのちのバトン」は誰かに受け継がれ、私の「いのちの残り火」は誰かの心に残る。死んだからといって何もなくなるわけでは決してない。
でもあまりにも分かりやすくスッキリとまとめれている分、物足りなさも感じます。老子の説くタオは、なかなか深遠な世界でつかみどころなく分かりづらいことは確かですが、一人一人の魂に訴えかけてくるものがあります。やはり原文からのダイレクトな訳が一見分かりにくいようでも”本質”に迫ることができます。
だからこの本を読んで老子が分かったような気持ちになるのはちょっと早すぎるでしょうし、残念にも思われます。
この本は老子の本格的な解説書ではなく、あくまで丸山氏が噛み砕いて説く老子です。その意味では、同じように個人的解釈にしたがって平易な言葉で語る、加島祥造氏の「TAO-老子」もお勧めします。
また同じく加島氏による、英訳された老子からの日本語訳という、ちょっとおもしろいコンセプトの「タオ・ヒア・ナウ」もお勧めです。こちらはより柔軟で新鮮な老子と出会うことができます。
電話してくる相手は匿名性があり、基本的にはどこの誰かはわからない。
そんな電話のかけてを相手にどう対応していくのか。
相談員は医者でもなければカウンセラーでもない。
いってみれば、ただの聞き役。
このセンターでは場合によっては、他の様々なボランティア施設や病院その他、相談者に役に立つ情報なども提供するが、基本的には相談者の話を徹底的に聴くだけ。
この聞き役の立場や心の持ち方を、さすが詩人だなって思わせるような言葉選びで書き示してくれる。
コーチングやカウンセリングのベースにあるのも「傾聴」だ。
分野を問わず人の話を聞くポジションにある人には是非読んで欲しいと思う一冊。
たとえば、仏教の最大の難関ともいえる般若心経の「色即是空」については次のように説明されている。(以下引用)
自分の生き方を一度徹底的に否定してみるとどうなるか。もう生きているのもいやになるであろう。しかし、徹底的に自分を否定しきってしまうと、死ぬ力さえもなくなってしまう。(中略)
そういうギリギリの状態に自分を追い込む、また追いつめられると、どうなるか。そのとき、もしその人に信心というものがあったら、その信心が、信じられないような力を発揮してその人をひっくり返すのである。くるっと体が宙で一回転したと思うと、なんともいえず大らかな、ふわりとした世界に抱きとめられるのである。(以上引用)
「信心」という言葉が引っかかるかも知れない。私はこれを「天地自然への信頼」と読み替えて理解している。自分の力で生きているのではない。目に見えぬ大きな力に生かされているのだ。それがなければ呼吸一つ、心臓の鼓動一つないのだ。その力に対する信頼を筆者は信心と表現しているのだと思う。
何回読んだかわからないが、何回読んでも新しい発見がある。