「七歳で死にかけた私が/おかあさん/まだ 生きているよ/うたっているよ/みんなに 支えられて」島倉千代子。
「ママさま/さようならと/思わず言った/臨終の/母の手は暖かった」齋藤茂太。
「『おかえり』/母の声が聞きたくて/『ただいま』/何度も叫んでみる/一人の部屋で」
「代わってあげれんで/ごめんな ごめんな/泣く母/泣く私の/背中をさすり続ける」
「しっていたよ/母さんの/本当の子でないことを/生まれ変っても/母さんの娘でいたい私」
この美しい言葉が語られた背景が知りたくなる。
お母さんに贈りたくなるような一冊。日本語の美しさを再認識させられた。
さて、今日は家に帰って親孝行でもしようかなぁ。
溢れる気持ちを語れば語るほど、それは心の声とはかけ離れたものになっていくのはなぜなんだろう。不惑の40代を迎えたはずなのに、日々自らの言葉に裏切られ孤独感ばかりがつのっていく。そんな暗い迷路で立ちすくんでいた時、出口を示す一筋の光のように、この詩集の一節に出会った。「言葉にできない感情は、じっと抱いてゆく。魂を温めるように。」
声高に語ることでむしろどれほどの言葉と時間を失ってきたのだろうという思いが込み上げてきて胸の奥が痛むとき、私はこの詩集を手に取る。沈黙につつまれた言葉の豊かさと、詩のちからを信じさせてくれるから。