被害者は以前の絢ではなくて美亜である(笑)。
話の筋は多分画面上の方に表示されているBook-DBにあるので、
ここではそれ以外の話をしておこうと思う。
タイムパラドックスもの、といわれる作品では、いかに話の前後関係と
その関連性がきちんと解決されているか、ということが重要であるが、
今作ではそのあたり、笑いあり涙ありできっちりと持って行っている。
不整合を作ってしまうと後々大変なのはわかっているのだが、大抵の
作家は、話を面白くしようとするあまりに拡張して破綻するのである。
しかし、笹本氏は違った。きちんと落としどころが解っている。
絡まった毛糸をほぐすような味わいの読みを、あなたにも。
では、最後に一!文だけ引用させて頂こう。
「これかー!」
既刊をすべてお読みになっていた方が、この作品をより楽しむための秘訣と言えることは間違いない。
残念ながら「継続は力なり」であるので、もしお読みでないのならまとめて購入することをお勧めする(もちろんこれを読んでからでも遅くはない)。
特に後期は「獅子王」に載っていないため、意図的にスタイルが変わっている。より楽しめるはずである。
17巻ではついに「あの男」が宇宙戦艦内部に飛び込んで、交渉の開始に至った。
果たして「あの男」が切り出す論理とその帰結はどこか。
だが、いつものドタバタぶりは変わるところがない。
というか変わってもらっては困るのだ、読者としては。
以前から読んでいる方には、いつものテンポを、じっくりと味わって楽しむことができるであろうことは間違いない。
最後に、この1行をレビューに引用させていただこう。
「アブダクションって言葉わかって使ってるんですか!」
女子高生の危険なアルバイトの報酬は?
京都旅行に行ってしまった宇宙人は誰だった?
アトロポースに乗り込んだ女子高生3人にくっついていた中尉は誰?
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作者は、ここまで打ってきた布石を土壇場で一気に片づけるつもりでいるようだ。読む方はそこらへん注意して、できればその元ネタになった巻も読んでおくと一層楽しいことうけあいである。
本編。ついにオープン・フリートの幕は切って落とされ...いや、開いた。
お客さんもたくさん、艦艇もたくさんいてますよ。
17巻からの続き、果たして辺境で激しい戦闘が巻き起こってしまうのか?
それともダイ姉ちゃんの指令、「戦闘行為を起こさせるな」をハウザーは無事に達成できるのか?
シンシア姉さんの出る幕はあるのか?
さらには混乱に乗じてエリアルを持ち込んでしまった岸田様ご一行はなにをする気なんだ??
いよいよ、終盤。足かけ十ン年の結末を見逃すな!
おまけ:自薦各キャラ名台詞。どこにあるかは買って探せ!
「たとえ話をしよう。悪い魔法使いが、高い城に住んでいる」(岸田)
「弱小三流会社の中古戦艦艦長が乗るには、いい舞台か」(ハウザー)
「お祭りだ」(ハウザー司令)
「なんでそこでそうするかなあ、そこはバク転してカウンターでしょ!」(シンシア)
最後の「四十二丁目の奇跡」には大いに笑わせてもらいました。
この展開、現実には絶対有り得ないシチュエーションなんだけど、もう許す。
笹本祐一の遊びは遊びなんだけど、愛敬がある遊びだよなぁ。
根底にあるのは、宇宙への憧れだということが分かっているだけに。
それが次の台詞によく表されている。
「ニューヨークで紙吹雪の出迎えとは、出来すぎだな」