「カタコトのスペイン語」を学習するための本といいながら、思った以上に文法に関する説明が記述されています。ただし、あくまで初めにフレーズありきの構成なのでこの本で文法を一から学習するのはむずかしいでしょう。
思うに、カタコトの外国語が話せるというのはあくまで結果であって目標にすることではないのでは?換言するならば、懸命に勉強したのだが学習方法が悪かったのか結果と!してカタコトのスペイン語しか話せないというのならまだしも、「カタコトのスペイン語を最終目標にして勉強する」というのは目標のたてかたとしてお勧めしません。かりに自分の言わんとする内容がかろうじて相手に通じたとしても、相手がそれに対して打ち返してきたスペイン語は、この本で学習した程度のスペイン語能力では、聞き取ることができないでしょう。
ある程度スペイン語の文法を接続法まで含めてきちんと勉強した読者がおさらいのために使うのならこの本は有益だと思います。この著者は比較的よく出来たスペイン語学習本を多く書いている人で、特に「スペイン語をはじめよう!―基礎から日常会話までマスターできる入門書 Nova books」(ISBN: 4931386857)などは入門者にお勧めの本です。
CD付きなのも嬉しい。ただ、ドイツ人がドイツ語で言った内容を、日本語でリピートする日本人の話し方が、わざとらしく、不必要に声を変えようとしていて耳障りではある。
理解が進むと、自然に文法や構造を知りたくなりますので、そのときは補助的に文法解説書を読むとよいでしょう。
スペイン語の入門書と銘うった本が果たして合格か否かを判断する際に私は、接続法を端折ることなく取り上げているかどうかを確かめることにしています。
この本は実に16頁を割いて接続法を細かく解説しています。また「頭の中の思いを主観的に述べる法(モード)/接続法とは何か」とか「ありそうもないことを考える/接続法の過去形」といった具合に、読者がイメージをつかみやすいように平易な言葉を選んで説明していて、大変好感がもてる本だともいえます。
▼付属CDの録音時間は57分21秒もあり、相当量の例文を読み上げています。発音から推して、吹き込み者の男女二人は南米出身者です。スペイン人と異なり、cとzの音を舌先を噛まずに発音しています。スペインの発音が南米の発音よりも「すぐれている」と評する気持ちはありませんが、cとsを明確に区別するスペイン式発音を(日本人にはちょっと手間ですが)身につけたほうがスペイン語の綴りを間違いなく覚えられる利点があるのも事実です。ですから私は個人的には南米の発音よりはスペイン式の発音のほうをお勧めします。事実cとsの綴り間違いをする人が南米には多いのです。
▼この本に氏名が明記されている二人の吹き込み者以外に付属CDには第三の男性吹き込み者がまじっています。その人の発音はスペイン語をローマ字発音しているのですが、まさか日本人ではないでしょうね。もしそうだとし!たら、それは読者への裏切りだと思います。読者は日本人の発音を聞くために2000円を支払うわけではありませんから。なんだかとても気になります。
付属のCDを何度も聴いていれば、表題に書いてあるような、リスニングのコツが次第にわかってきます。ただ、リスニングの能力全般に言及している本ではありません。その点、注意が必要かも知れません。
この本のテーマは、あくまで、自然な英語の「発音」についてだということです。