和書 492168 (264)

固有値問題30講 (数学30講シリーズ)

しかし、ヒルベルト空間は扱っているもののバナッハ空間やソボレフ空間については全く触れていない。また、リースの(表現)定理は扱っているのにハーン・バナッハの定理やラックス・ミルグラムの定理は省略されている。さらに、ベールのカテゴリー定理や３つの基本的原理(一様有界性の原理、開写像定理、閉グラフ定理)も省略されている。

このように重要な定理がほとんど抜け落ちてしまっている為、この本だけでは関数解析全般を学習するに!は不充分なのである。その不充分さが本のタイトルを関数解析とはしなかった理由の一つでもあろう。それ故、読後にもう一冊専門的な本を読まないといけない。そういう意味ではルベーグ積分と関数解析の中間を埋める本と言えるのかもしれない。

専門的な本を読んだ後に、同著者の「無限からの光芒―ポーランド学派の数学者たち」もあわせてお勧めしたい。こちらはバナッハ、シュタインハウス、シャウダーといった人達が登場する「固有値問題30講」後の関数解析の歴史物語である。

コルモゴロフの確率論入門

デカルトの数学思想 (コレクション数学史)

　本書は、「高校までは数学が大好きで受験でも切り札的存在だったにもかかわらず、大学に入ると数学の講義が苦痛でたまらない、大学レヴェル以上の数学がさっぱり分からない」という人に、その原因をこっそり教えてくれるような本だと私は思います。大学受験までの数学では初歩的な概念の具体的応用例の塊であり、理論めいた問題はほとんど扱われません。（微分積分の入試問題などをイメージしてください）ですから、この時点での数学はある種のナゾナゾであり、ミッションのようなものです。ところが、大学以降の数学はとたんに学問的になるため、抽象的な一般理論が中心で、哲学のような雰囲気に満ちています。そういう意味で、理系科目と思われがちな数学が、実はけっこう文系的な性格を帯びてきます。このあたりが、数学大好きのバリバリの理系だった人のなかに大学で数学嫌いになってしまう人が少なくない理由だと思います。本書を読めば、なぜ純粋数学が哲学的なのか・理系分野に完全に分類されないのかが、はっきりと見えてきます。

　また、哲学などが好きな文系の方が本書を読めば、敬遠しがちだった（必ずしもそうとは限りませんが）数学に興味を持つようになるかもしれません。

ニュートン―流率法の変容 (コレクション数学史)

ライプニッツ―普遍数学の夢 (コレクション数学史)

近世日本数学史―関孝和の実像を求めて (コレクション数学史)

怖いほどダマされる数字トリック (PHP文庫)

混合実験の計画と解析

コンジョイント分析

幾何学思想史 (近藤洋逸数学史著作集)