どのようにゲートを組み合わせれば基本的な回路が出来るかは考えれば分かりますが、制御をおこなう上での間違いがない動作をおこなわせるための設計はどうやればいいのかというのは難しい問題でした。
本書はそのあたりのポイントをきちんと押さえ、分かりやすく説明しています。
シーケンサを構成するカウンタとしてジョンソンカウンタと言うものがあることを知ったのも本書でした。
対象読者は非常に限られると思いますが、コンピュータハードウエアのロジック設計に携わる人は、たとえHDLで設計しようと、一度目を通しても良いと思います。
というか、目を通すべきです。
そのため、輸出向けに限らず国内のこれらの装置・設備建設の仕事で、ASME規格に関係したり、中には工場のASME認証取得にたずさわえることになる人はかなり多いのです。
しかし、この本を初めて見た人は、同じ出版元の今年廃刊になった、『ASME規格の基礎知識』の後継本と思うだろう。ところが、これが見事に違っていた。「基礎知識」の方は完全に省略されている。
たしかに内容的にはASMEに所属する人が書いた本の翻訳だから、間違いはなかろう。しかし、日本人向けの「ガイドブック」というのは、ヨコの物をタテにすればそれで済む、というものではないと思う。このあたりを発行元は何か勘違いしているようだ。
昔、中1時代とか中1コースという学習雑誌があった。「小学校と中学校はどう違うの?」、「初めて学ぶ英語ってなぜ勉強するの?」というように、中学校生活のイロハから、いろいろ手引きしてくれました。そうして、3年生には高校受験の対策本へと進んで行ったものでした。あの頃の私もこれらの雑誌に助けられました。
『ASME規格の基礎知識』にも、雑誌『中1時代』のこうした精神に通じる雰囲気がたくさんありました。だから、大勢の人に支持されて売れたと思う。あの本は、そもそもASMEとは何か? から始まり、学会がどうして規格などというのを出すのか、ということまで書いてあって、誰もが抱く疑問に答えるように書いてあるので、日本人の波長に非常にぴったりでした。
この本は、ASMEを中学校生活に喩えていえば、読者を中1(ASMEの初心者)ではなく、いきなり中3生(ASMEになじんだ人)に設定して、高校受験対策(ASME認証取得対策)の本に仕上げている。
これでは、若い人やこれからASMEを勉強しようとする人には、まったく読めない。事実、読ませてみたら、すぐ嫌になってブン投げた。職場には必ず、初心者というのはいるんですぞ。他部門から異動して加わったりもするから、年齢にも関係ない初心者が。こういう人たちは何を読んで初歩の勉強をすればいいんだろう?
文章もこなれているとはいっても、やはり翻訳文である。しばらく読むと、気が狂いそうになる。書いた人の息吹や鼓動、感情などが感じられない。コンピュータが書いたような、無生物を主語にした機械的な文章が延々と続くからだ。
この本には、AIA(公認検査機関)とは、具体的に何という会社か、社名もないので調べようもない。AIAは損害保険会社と密接な関係があるはず。米国・カナダに輸出する場合は、NBにデータ・レポートを送付するということが、すっぽり抜けている。AI(公認検査官)とはどういう人か、の説明もない。いろんなASME特有の用語がでてくるけど、巻末にはASMEのグロッサリー(用語集)がない。索引もない。
何から何まで、初心者には不親切です。原点に返って出直ししてほしい。国内にはASME解説本は、この出版元にしかないので、今後やる気をなくさないよう、激励の意味を込めて、三角3つとします。