芦生の森は、巨木もあり、綺麗な水が流れ、自然に包まれている感触が、いつもたまらなく好きな場所である。しかし、そこには厳しい自然の中で生活されていた住居跡もあれば、人工的に植林された木々もある。いまは静かな森ではあるが、この本を読んでからは、その森での厳しい自然を相手にした芦生の人々の生活がそこにはあったこと、今でもその森を大切に守っておられることをかみしめて歩いてみたいと思った。いつまでも大切にしたい「癒しの森」だ。
第一部では、森林に対する概論を述べます。各国の森林減少の現状、原因、マクロ的な森林政策の考察、NGOなどの
関連、日本の輸入、社会林業という考え方など多様です。
第二部では、具体としてフィリピン、インドネシア、ロシアなどの住民の生活に焦点を当てています。
フィールドワークの具体的な調査が載せられており、アブラヤシ農園操業による生計の変化、森林の維持に成功した
棚田地域の経緯の調査、伐採労働者の成因、先住民の自発的な組合形成などが詳細に説明されています。
第三部では、同じく具体ではあるものの、一地域の政策的な変化と住民の関係を追っています。住民の森林に対する
考え方、考え方の変化、各国の森林政策、住民と政府の関連などが理解できます。
第四部では条約や森林認証制度、NGOなどが情報の伝達においてファシリテートするアドボカシーの概念などを
分析、提唱していきます。非常に踏み込んだ議論がなされているとともに、実際にそうした政策・NGOに関わっている
各氏の議論は現実的な視座も十二分に確保されていて頭が下がります。
具体⇔抽象、マクロ⇔ミクロ、現状分析⇔今後の展望など、「住民主体の森林保全」というテーマに関して
あらゆる立場からさまざまなことを知ることができます。同時に参加による学習と行動―PLA(participatory
learning and action)など、現地住民と関わる際のパラダイム転換の必要性といった行動を支える概念を知ることができ、
本当に中身の濃い本です。