最近になって、「人心をかく乱した物質」ともいわれる環境ホルモン。その危険性はどれほどのものか。1998年の本なのに、今でも新しさを感じます。
化学物質否定派の「上手な筆さばき」に惑わされることなく、ファクトを整理した上で、どこまでが科学的に解明されているかを明らかにしています。
「害あり」「害なし」それぞれを支持する研究成果が報告されていること、データは同じなのに解釈が違う場合があること、本書に示された例を見ると、はっと目が覚めた気になります。
最近になって、ようやく世の中が本書に追いついてきました。
国も環境ホルモンが疑われた物質の評価結果を報告しましたし、世論も化学物質に対し、比較的冷静に反応できるようになったように思います。
出版当初にレビューを書いていたら、間違いなく星5つだったのですが、さすがに年月が過ぎてしまい、後継本も次々出ているので、1個減点しました。
アトピー、アレルギー、精子減少、精神病、同性愛、凶悪犯罪、少年犯罪、知能低下、行動異常etc...『環境ホルモン入門』を読むと、これらが全部明らかに環境ホルモンのせいだと思ってしまうのですが、現時点では科学的に論拠が乏しいと言わざるを得ません。環境ホルモンの危険性の警鐘を目的とする執筆陣の立場からすると作為的な情報の選択も仕方ないと思われるのかもしれませんが、それにしても、この本は「煽りすぎ」だと感じます。
この本は1998年に出版されています。環境ホルモンブームに火をつけた『奪われし未来』という本の出版が1997年で、それまでは内分泌攪乱物質という概念自体が存在しなかったわけですから、当然、ここに掲載されているデメ?タは内分泌攪乱という視点からは検証されていない段階のものがほとんどです(ホルモン様作用に関して調査の結果が出ているものは現在でも限られています)。そんな中でここまで断定的な論じ方ができるものでしょうか?
この本はお薦めできません。
問題提起の書としては大変センセーショナルで、発刊時には一定の意義を持つ一冊であったのかも知れませんが……