演習問題で理解度をチェックしていく構成は、学校の授業などを意識したものでしょう。1回の分量や構成はよく考えられたものだと思います。残念なのは演習課題の方向性です。とにかく「作る」ことが大切なのだ、という意図が見えます。たしかに HTML は道具に過ぎないのですが、「その本質を理解することが、コンテンツの質も上げていく」という意見もあるわけです。
マークアップを考えることは文書の構成を再検討することにつながり、整然とした HTML 文書を CSS でレイアウトしていく作業は、「内容ありきのデザイン」を認識するまたとない機会となります。本書は後半になるとデザインから逆算して HTML を書いていきますが、本質的な解説をなおざりにして安直な実学を教えることには批判もあるだろうと思います。
講習や授業のテキストなら「30時間でマスター インターネット2 HTML+メール」と、自習書をお求めなら「HTMLとスタイルシートによる最新Webサイト作成術」「速習WebデザインHTML&スタイルシート」と比較検討されることを勧めます。
本書は2002年発行にもかかわらず、1999年に勧告された HTML4 を新しい仕様として忌避し、HTML3.2 をベースに解説しています。2002年といえば Windows XP と IE6 が既に登場しており、時代錯誤の編集方針でした。しかし本書がおかしいのは、HTML4 で初めて採用された要素や属性も平気で紹介していることです。本書は情報の共有を追求した HTML4 の基本理念に反対しつつ、便利そうな要素技術は取り込むのです。
「見てすぐにわかる」本書の解説は、木を見て森を見ません。だから、読者は結局、森の中で道に迷います。HTML4 が示した様々なルールは、森の道しるべに相当します。読者は個々の要素の紹介にばかり目がいきがちですが、森の全体像を把握することの方が大切です。私は本書を勧めません。知識が体系化されず「わかったつもり」で終ってしまうからです。
「プロが教える!!初心者のためのホームページデザイン教室」または「HTMLとスタイルシートによる最新Webサイト作成術」の検討を勧めます。