この本はそんな「今日」の素敵さ、大切さをおしえてくれる1冊です!
Blueの小さな本で、大切なお友達への贈り物にも最適だと思われます。
英訳もついており、海外の子どもたちへの贈り物としても素敵です。
「ごきげんなすてご」
いま流行中の言葉で言うなら、“ありえない”表現だな。
そう思ってこの本を手に取り、
そのやさしそうな挿絵を目にして、
結局家まで持ち帰りました。
たとえば嫁姑の問題。
昔から続いていて、そしておそらくこれからもずっと続いていくであろう問題。
この本で扱われているのは「下の子が産まれちゃって、寂しい思いをしているおねえちゃん」です。
この「上の子と下の子の問題」も、きっとずーっと続いていく問題。
ある日おかあさんが「おサル」を抱いて戻ってきた。
全然かわいくないのに、おかあさんは「おサル」ばっかりをかわいがる。
つまらないつまらないおもしろくない。
女の子はついに「捨て子になってやる」と固く心を決めて家出をします。
おかあさんは「いってらっしゃい」と送り出して……。
ダンボールにうずくまって
拾ってくれそうな人たちに愛想を振りまく女の子。
でもなかなか誰も拾ってくれません。
笛を吹き鳴らしても、「かわいいすてご」と書いた旗を振り歩いても
やっぱり誰も拾ってくれません。
そんな強がりな女の子の心の行方が、
素直に、手に取るようにあらわれています。
ずっとずっと頑張ってはりつめていた気持ちが
ほぅっとゆるむラストシーン。
一緒に読んでいた娘は、私の手をぎゅうっと強く握り締めてきました。
そうだった。
この子はたった1歳のとき、おねえちゃんにされてしまったんだった。
下の子が産まれて、
少しだけおにいちゃんおねえちゃんに寂しい思いをさせてしまっているお家の方へ。
もしかしたらお子様と一緒にこの本を読むだけで、
いろんな問題を解決できるかもしれません。
少しだけみんな、やさしくなれるかもしれません。
「あとがき」には、このお話が生まれたときのエピソードが書いてあって、
作者である“いとうひろしさん”の優しそうな人柄に触れることもできます。
自分がこのくらいの歳だったころ、世界はこんな風に見えていたかもしれない、自分をこんな風に思っていたかもしれない、そういうことを思い出させてくれる物語でした。バラバラになりかけた家族、中学受験に失敗した自分、近所とのモメゴト…12歳は子供かもしれないけど、でも12歳なりにいろんなことを考えて、感じて、悩んで生きてるんだということ。あの心の痛み。描写は決して明るくありません。途中で心が苦しくなって、読むのがしんどくなってしまうようなところもありました。それでもこの先に光は絶対にあるんだというのを感じさせてくれる、そういう雰囲気の物語でした。読み終わって、とてもステキなものを読んだという気持ちになりました。
ジブリの「トトロ」に出てくるみたいな、兄弟がまだ子供同士で、ずっといっしょにいる、あの一瞬のきらきらした時間。そんなきらきらがいっぱいつまっています。
「夏の庭」「ポプラの秋」と並んで、大好きな本がまた一つふえました。