和書 500824 (263)

女が死と向き合う時―60歳の仕切り直し

女の脳・男の脳―最新大脳生理学が明かした驚くべき考え方の差 (ノン・ポシェット)

女の皮膚の下―十八世紀のある医師とその患者たち

　　このような記載を初めて十八世紀ドイツの小都市アイゼナッハの医師シュトルヒが集めた約一六五〇人の女性たちの診療記録の中に発見したとき、著者は困惑した。「というのは、自分の身体を懸け橋にして、私は過去に入り込めなかったからである」

　　著者の研究に既成の医学はほとんど役に立たなかった。医学にとってこれらの情報はばかげた迷信の産物であり、捨て去るべき遺物に過ぎなかった。導き手となった方法は、人類学、神話学、美術史、言語学などの中にあった。「私は歴史家としての限界を越え、女性としても未知の国へ入っていった」

　　こうして、市民階級の女性、宮廷女官、牧師の未亡人などの訴えに耳を傾けた著者は、女性性や身体についての感じ方はその時代特有の姿をしているという認識にたどり着く。それはとりもなおさず、現代の私たちの身体感覚自体も時代の刻印を帯びているということの確認だった。

　　宇宙のリズムから切り離された個人主義的な身体感覚、健康への脅迫神経症的なこだわり、医療への過度の依存。これらもまた、産業革命以後の経済社会特有の「奇妙な」現象なのである。 　この本は米国の科学史学会、医療人類学会から賞を授けられた。医療の改革や健康運動にかかわる人々からも大いに共感を得ている。

女の皮膚の下―十八世紀のある医師とその患者たち

時には鼻血も月経の血に含まれる、男性も乳を出すなど、現代の感覚とはかけ離れた身体感覚に驚かされる。考えてみれば、我々がいま自明のことと思っている男女の身体的差異は、19世紀以降の医学的確認によって決定されてきたものであった。それ以前、医者が病気に対してどれほど無力な存在だったかを思い起こせば、このこともある程度は納得がいく。

しかし、疑問も残る。身体、特に女性に関わる妊娠などの問題は、家庭や共同体に基礎的な知識が存在するのが普通なのではないか。
当時の社会に関する研究を添えることで、よりしっかりとした研究となるのではないか。

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