この本の特長は、手紙本文の例としては、すぐ使える手紙文の実例が載っているのではなく、見習うべき心のこもった手紙の手本が紹介されている、ということです。公・商用文については触れられていません。
とにかく多くの種類の、そのまま名前だけ変えて書き写して使えそうな、手紙文の模範が見たい、という方には他の本をおすすめします。(そもそもそのようなことはこの本の意図に反しています。)その点においては、この本は、書き方の基礎がわからない初級者向けであると同時!に、これを参考にして、許容範囲をふまえつつも自由に自分の言葉でドイツ語作文ができるぐらいの、中~上級者向けであるとも思います。
形式にとらわれ過ぎるより、自分の文章で書いた方が気持ちが伝わる、という先生の心が至るところから伝わってくる本です。日本語の手紙を書く時ですら参考になります。
「第一部」の「I」は「独文手紙の様式」。
手紙のレイアウトと各構成要素の説明・呼びかけや結びの例・封筒の書き方など、必要だと思われることはひととおり載っています。レイアウトについては、ビジネスレター向けに、各々の項目のタイプする位置なども説明してあります。
「第一部」の「II」は「例文(一般的)」。
手紙の導入部分の書き方・新年の挨拶や誕生日祝いなどの表現の文例が載っています。
そして「第二部」は、これが一番ページ数が多いのですが、「例文(具体例)」として、私信・公用文(個人から企業や機関など宛て)の手紙(全文)の例が多数紹介されています。もちろん日本語訳も載っていて、難しそうなところは「注」として単語の説明もなされています。「祝賀状」・「お悔やみ状」・「礼状」・「申し込み・予約・注文」などなど…。履歴書の書き方もあります。
「第三部」は「ビジネスレターの書き方」で、「はじめに」で2ページ「貿易取引の流れ」が簡単に説明してあり、「例文」は「第二部」と同じ形式で商業的な取引の為の手紙文の例が31種類載っています。
ちなみに、(呼びかけの例などにはありますが、)文例・手紙の例としては、完全な私信も、ほとんどがSie宛てで書かれています。
また、個人的には、「例文(一般的)」には「お誕生日おめでとう」はどう書くのかは載っていますが、「例文(具体例)」には手紙の例として誕生日を祝うものが載っていないのが残念です。
2.見た目が良くコンパクトで、堅苦しくない感じなので、もっと若者向けの内容が載っているのかと思いました。文の内容的にも、言葉的にも。例えば、お気に入りのサッカー選手やミュージシャンに書くファンレターや、サインカードをもらう時の文例とか、そういうものが載っていれば良いと思いました。確かに、新しく出版された分、ほかのドイツ語の手紙の書き方の本より、全体的に現代風ではありますが。ほんの少しですが、パソコンで使う単語が紹介してあったり、「実用Eメール」のページがあったり。でもその部分をもっと多くして、他の類書との差がもっとあれば良かったのでは。
中身はレイアウト重視で、空白が多く、情報量が少なく感じます。本の外見にこだわらないのであれば、手紙の書き方の本は、文例が多いほうが実用的なのは言うまでもありません。
しかしこのシリーズは、ドイツ語の本には珍しく、おしゃれな感じなので、その点ではおすすめです。本屋に並べてあるのを見ると、思わず手に取りたくなるような本です。