史実においては、1577年、加賀手取川の戦いで上杉謙信は
柴田勝家率いる織田軍を完膚なきまでに打ち破ります(単なる小競り合い説も有り)。
しかし翌年、関東出兵を前にした謙信は脳卒中で世を去ります。
もし、ここで謙信が死なず、上洛を目指して信長と戦ったら・・・。
そんな想像を満足させてくれるのが本書です。
重厚かつ緊迫感のあるストーリー、巧みな構成など作者の筆力は数ある仮想戦記の中でも群を抜いています。
色々突っ込みどころも有りますが(例えば騎馬隊強すぎ、とか)。
史実において、ついになされなかった謙信対信長の直接対決。果たしてどちらが勝利者となるのでしょうか。
第1巻では、手取川の戦いの翌年、上杉軍と織田軍が九頭竜川で激突するまでが語られます。
2巻ではいよいよ信長本人が織田軍の陣頭指揮を執り、
上杉軍に対して巻き返しを図ります。
謙信を主役に話を進める本書において、信長はいわば敵役なのですが、
単なる謙信の引き立て役では有りません。
ライバルはかくあるべし、というべき颯爽とした格好よさ。
謙信とは異質の冷徹、怜悧な頭の切れる人物であると同時に、
秀吉の妻おねとの会話に冷たいだけではない人柄が表れています。
これなら、信長ファンも満足?
第1巻でのあっけない上杉軍の勝利に、「織田軍、ちょっと弱すぎ」と思わされましたが、
2巻以降信長のおかげで非常に緊迫感が高まり、中だるみしません。
史実ではないだけに、先の読めないドキドキ感を十二分に堪能でき、続きを読むのを楽しみにしてくれる快作ですね。