さて、今まで日本ではトイレからの汚水のみを処理する単独浄化槽が主流だったが、これでは家庭から出る排水の約三割しか浄化していないことになる。残りの七割は台所や洗濯水からの汚水で(驚くかもしれないが、糞尿よりも植物油や醤油、酒といった物の方が環境負荷が桁違いに高いのである)、これらは今でも垂れ流され、川や湖、海といった水源を汚濁し続けている。
工業排水が厳しい法規制でかなり軽減された現在、日本の水を一番汚しているのは一般家庭からの生活雑排水なのである。
そこで、トイレからの屎尿もその他の雑排水も微生物の力で一緒に分解・浄化してもらおう、というのが合併浄化槽である。
本書で作者はじつに分り易く合併浄化槽のメカニズムと利点を説明し、現行の(税金を食いすぎ、完成まで時間がかかりすぎる)下水道行政に疑問を呈し、一刻も早く単独浄化槽をなくそうと主張している。
きちんと設計され管理された合併浄化槽なら汚水を飲み水に近い水質まで近づけることができ、日本の水環境を危機から救えるのだ。
作者の一人坪井直子氏はもともと主婦・女性の立場から水環境の勉強を重ね浄化槽のエキスパートになったという人で、そのせいか文章はとても親しみやすく分りやすい。
志の高い本である。水環境に興味のある方、特に釣りで魚達にだいぶ世話になっているあなた、この「合併浄化槽入門」は、石井勲氏/山田國廣氏共作の「浄化槽革命」と共に必読です。
ちなみに、本の中のイラストはとてもほのぼのしていて楽しい。
坪井さん、本間さん、続編を望みます!