結果、今、馬の血統学には、「生物学的には説明できないが、そのようにして良かった」事例が多くあると言う状況です。(ニックス・近親交配の血量・母父の血の強弱など)今、遺伝学と馬学は、お互い手を携え、そのような説明がつかないことを解明する方向へと向かっています。私はその入門書と思って、これを購入ました。
しかし、まず田中氏が吉沢氏の話を聞いていない。吉沢氏は、馬の血統学のプロであり、当然知識量は豊富です。対して、田中氏は獣医学どころか、生物学の基礎教育を受けてすら居ません。(法学部卒業後、文部省入り、後民間企業を経てフリーライター)
結果、吉沢氏が自分なりの馬の血統学の疑問をぶつける、それを無視して田中氏は学会でも疑問視されているが、インパクトだけはあるようなことを滔々と述べる。これの繰り返しとなり、吉沢氏のセリフだけ読むほうが良い位です。編集してこれなのですから…。
馬学、遺伝学、獣医学、畜産学に興味のある方は、それぞれの入門書を読まれたほうが良いと思います。講談社ブルーバックス新書あたりが良いでしょう。馬の血統学に興味のある方は、吉沢氏の書かれた、「競馬の血統学」「競馬の血統学2」を読まれると良いと思います。これらは好著です。馬券の当てようとする「最強の血統学」に興味があるならば、「パーフェクト種牡馬辞典」が良いかと思います。これは毎年刊行されており、血統全体の最新状況と、種牡馬ごとの最新データが豊富に収録されています。
本書には1頁に1つの箴言 の原文、書下し文、訳文が掲載されており、非常に簡潔な構成です。自分自身を反省して読む方には都合のよいスタイルです。しかし、私が若輩ということもありますが、解釈なしでは理解しにくい箴言が見受けられ、吉田氏の体験等を事例に箴言を噛み砕いてもらいたい個所がいくつか見受けられました。
いみじくも冒頭の「菜根譚案内」で指摘されている(P.ⅶ)ように、菜根譚は近年まで中国本土ではさほど注目されず、むしろ日本で明治期以降に読まれました。これは身分制度が強固で階層間の流動性に乏しい社会では、菜根譚が説くように身の中庸を保ち、君子然として生きることが理想像に過ぎなかったためだと考えられます。しかし、個人的には明治の同時期の処世論としてはスマイルズの『Self Help』(中村正直『西国立志編』)がよりネアカだとの所感を持ちます。『菜根譚』が人を型にはめることで中庸を目指すとするならば、『Self Help』は社会階層的な枠組みを超えるために自助努力を推薦しており、より開放的で闊達です。この点は読者の好みでしょう。