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和書 529056 (382)



神軍 緑軍 赤軍―イスラーム・ナショナリズム・社会主義 (ちくま学芸文庫)
販売元: 筑摩書房

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 トルコ、カフカース、中央アジアのムスリム・ナショナリズムとボリシェヴィズムの関係を論述した、かなりアカデミックな内容の本です。

 一見すると、無神論のボリシェヴィズムとムスリムは単なる対立関係にある思われますが、実際は相互の思惑により複雑に入り組んだ関係を成していました。ロシア革命は、ロシア内外のムスリム・ナショナリストにとっては、独立への好機であり、ボリシェヴィキはヨーロッパ帝国主義に抗する同盟者とも思われていました。一方、ロシア・ボリシェヴィキにとっての東方のムスリム世界は、革命を広める対象であり、かつ帝政ロシア以来の殖民地支配の対象でもありました。

 当初は接近・協力から始まったムスリム・ナショナリズムとロシア・ボリシェヴィズムですが、やがて相互の思惑の違いが明らかになり、離反・対立へと変化していきます。ソ連邦の構成国となったイスラーム諸国は、この矛盾を内部に抱え続けていき、ソ連邦の崩壊後には、再び政治的不安定要素として浮かび上がってきます。

 文庫本とはいえ、学術的な著書であり、決して読み易くはありませんが、イスラームとロシアの関係を知る上で欠かせぬ著書に間違いありません。




新憲法の誕生 (中公文庫)
販売元: 中央公論社

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日本占領期の憲法制定過程の全貌を明らかにし、日本国憲法の意味を問い直していく。本書を通して、日本国憲法は勝者によって押し付けられたとする見方があまりにも皮相かつ単純であることがわかる。

例えば、第二章に詳述されているように、様々な民間草案を仔細に見ていくと、後のGHQ案に近い案もあった。それらの案にはGHQも深い関心を示していたという。
「日本国憲法を生み出した力、それは決して国家対国家の、勝者対敗者の政治力学からだけではなかった。制定過程への関与の、その大小はあったにせよ、本質的にはその個々人の憲法観、人権思想に他ならなかった。日本国憲法には国家を超え、民族を超えた人々の、憲法観、人権思想が反映されている。」(P387)

また、天皇制の護持を目標とする日本の保守指導層は、日本への厳しい懲罰を主張する国際世論を懐柔し、「国体」を護持するために、連合国の要求する「非軍事化」と「民主化」を受容していく。国際世論と極東委員会が軍国主義の象徴として認識する天皇制を保持するには、徹底的な非軍事化しかない、そのような配慮に基づき戦争放棄条項が憲法に組み込まれた。9条と1条は不可分にリンクしているのである。この点においても事実は「押し付け」という単純な枠組みでは捉えられないことが分かる。

このように、本書には、「日米合作」ともしばしば称される戦後日本の起源について実に興味深い事実が指摘されている。ダワーの『敗北を抱きしめて』(岩波)と並んで占領期の日本に関心のある方には決して外せない一冊であろう。また、今後の日本のあり方を考える上でも必読である。改憲が目前に迫る今、「押し付け」論者達のように感情的に一気呵成にことを進める前に、ここはまず原点に戻って憲法制定過程における「国家を超え、民族を超えた人々の、憲法観、人権思想」を再検討し、本当に「時代遅れ」なのか議論したいところである。




自己決定権は幻想である (新書y)
販売元: 洋泉社

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 書かれていることはごく当たり前のことである。しかし、著者も述べているように、当たり前のことを叫び続けなくてはいけない世の中なのだからしょうがない。私の死は私の近しい人すべてに影響を与える。こんな当たり前のことが自己決定権というもっともな言葉によって見えなくなってまう。私たちは関係性の中でしか生きていけないのに、この言葉は関係性を破壊してしまう。
 この本は自己決定権そのものを批判する箇所より、自己決定権によって引き起こされる弊害について述べている箇所の方が分量が多い気がする。その意味で純粋な自己決定批判にはなっていない。また、自らの行為が他者に影響を与えるとしても、なおその上で、自らの決定と他者の気持ちどちらを優先させるべきかについては述べられていない。この本の射程を超えているのだろうと思われる。
 総合して考えると、この本には一読の価値があるだろう。純粋な自己決定批判以外の箇所からも得ることが多い。個人的には自己決定権はあらゆることを他人事にしてしまう(本人がよければいいんだから、遺伝子操作、クローンも…)という箇所と、具体的な場面においてはもっともな事でも、抽象化してしまうと問題が生じるという箇所が勉強になった。





団塊の世代だから定年後も出番がある (新書y)
販売元: 洋泉社

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団塊の世代とは何だったのか (新書y)
販売元: 洋泉社

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《たとえば,大東亜戦争の責任を誰も取ろうとはしない,とはよく聞く。では,六〇年安保闘争や全共闘運動の責任は誰がどのように取ったのか。このような問いかけが発せられたこと自体,私は寡聞にして知らない。もし,そもそも責任なんか取れない戦いであり,運動だったというなら,そのこと自体を総括して(連合赤軍事件のおかげで,この言葉は七〇年代のワルノリ雰囲気の中で,よくネタにされた)せめてものおとしまえにしようと,誰も考えなかったのだろうか。
 そうだとしたら,そんな奴らが歳だけは五十を越えて威張っているのは,やっぱりよくないと思える。
 私に彼らを糾弾する資格があるかと問われれば,たぶんないだろう。が,すぐ下の後輩として,彼らをモデルにして,現在の始まりである私意識を描くことぐらいは許されるのではないかと思っている。現代を時代として捉えるためにはそういうのも有効だろう。》(27頁)

 民主主義教育,全共闘運動,フォークソング,マンガ・・・といった切り口から,いわゆる団塊の世代の無責任なありようといったものを,「すぐ下の後輩」(著者は1954年生まれ)の視点で描いている。
 格別新しい情報が盛り込まれているわけではないが,読んでいて面白く,納得する点が多かったのは確か。





天皇と日本人の課題 (新書y)
販売元: 洋泉社

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冷戦が崩壊して以後、世界の各地で自分たちのナショナリティを問うアイデンティティ探しのゲームが繰り広げられており、日本もその例外ではない。にも関わらず、明治以後日本の国民国家形成と国民統合に大きな役割を果たしてきた天皇・皇室の問題が最近あまり問われなくなってきた。「天皇抜きのナショナリズム」と呼ばれる現象も発生している。日本人にとって天皇とは何なのか。「天皇抜きのナショナリズム」などが可能なのか。考えてみる必要がある。本書は、タイトルが示すとおり、天皇と日本人という重大問題を正面からあつかった好書である。

本書の大部分はこれまでの天皇論の著者なりの理解に基いた紹介である。第五章で戦後日本における天皇が国民統合の象徴として果たしてきた役割が論じられている。そして結論では、天皇が「政治社外」に後退し、「文化遺産」としての役割に限定されることが、天皇にとっても国民にとっても望ましいと主張する。私はこの主張に賛成である。しかし本書での議論はやや舌足らずだ。第五章と結論での議論を、もっと詳細に展開してほしかった。

また天皇に代わるナショナリティの保証として、国家自体の論理に基く法的共同体の立ち上げを主張している。しかし、これでは弱いと思う。ナショナリティには、法的共同体という「中性的」の原理の他に、そのナショナリティ自身の固有性、代替不可能性を保証する別の論理が(ナショナルな歴史・伝統の論理が)必要となるのではないか。この固有性を保証するナショナルな歴史・伝統をいかに〈再構築〉していくのか。これが著者の言う天皇からの「元服」以後の日本国民の課題になるのではないか。




出会い系サイトと若者たち (新書y)
販売元: 洋泉社

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 本書の内容は、

・出会い系サイトの歴史、分類、統計などの、基本的データ
・出会い系サイト利用者へのインタビュー
・出会い系サイト関連事件のルポ
・出会い系サイト規制法の成立経緯と問題点

から構成されています。

 一般に、ノンフィクションというものには、著者の主観的な感想の多いエッセイ的なものと、事実中心のドキュメンタリーとがありますが、この本は圧倒的に後者で、著者自身の主観的な意見は最低限に抑制され、あくまでファクトの積み重ねにより構成されています。

 そのせいか、印象的にはかなり地味ですが、「出会い系サイト」というテーマの性質上、煽情的な筆致の本や、生煮えの仮説を振り回すような本が多いの中にあって、その堅実な筆致にはかえって好感が持てました。

 したがって、まず出会い系サイトの問題に関する基本的な事実をきちんと押さえたい、という人には、わりとお勧めできる本ではないかと思います。

(星4つはちょっと甘めかも知れませんが、ちょうど他の本に辟易していたところだったので(^^)。)




ナショナリズムの練習問題 (新書y)
販売元: 洋泉社

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 戦後ナショリズムの議論はほぼ全て欧米の議論によっている。特にそれらの理論はソ連崩壊以前のものも多い。
 理論を儒教圏である日本に当てはめただけの議論が多い中、本書は日本におけるナショナリズムを考えようとした労作である。
 60年代的な国家悪的ナショナリズム論が跋扈するなかで貴重な視点といえる。
 特に日本のように言語が統一されているうえにインテリゲンチャが海外に決して出て行こうとしない国であることを考えさせてくれる。
 その点正義や民主主義が911以後自明の原理でなくなったにも関わらず日本でだけは例外とする論者にも影響を与えるだろう。




日本人の壁 (新書y)
販売元: 洋泉社

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 現存する日本人の多くがネイティブではなく、中国大陸より戦乱を避けて移動してきた人々の子孫であり、その内向性と、和をもって尊しとしてきた付和雷同な集団への同調、(著者の仮説ではあるが)ストレスに脆弱なデリケートな脳に起因する、自殺やカミカゼへと進む情緒的な思考停止などをもって、日本人の島国根性な国民性を心理学的に検証している本書は、自分探しの大流行やパラサイトのような今時の若者に見られる、従来の日本人像からすれば特異な現象を、「自分たちが身を粉にして食うや食わずで働いても、子どもらが豊かになればいいという考えからなる『子孫繁栄による魂の救済』が、拝金主義の台頭によって消失し、それに代わるものを見出していないから」と説く等原因を国民性の根源に求めている部分にはうなづかされます。
 結論として、「自分を知り、他国から孤立せず文明的に絆を強く結び、弱点を克服する事が求められる」と結んでいるが、大部分が筆者の言うように「短期間で心理的特性を大きく変化させる」可能性は低く、筆者の指摘に気づいた者だけが、華僑のように国を出、“国は滅びても、人は滅びない”との道を選ぶのではないかとも考えさせられる本でした。




日本人はなぜナメられるのか (新書y)
販売元: 洋泉社

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著者は臨床社会心理学者であることから、序盤は著者の専門領域をベースとした日本人の思考特性について言及されている。タテマエとホンネの使い分けが日本特有のものではないものの、欧米文化と比較してあいまいさの度合いが非常に高いという指摘はなるほどと思う。しかしながら、読む進むにつれ内容が著者の感情的な表現が目に付くようになり、読んでいて不快感を覚えすらした。全体的に、本書は学術的な見地から書かれておらず、著者の偏った私見であふれている。

書中、日本人の特性を念頭に日本の外交・安全保障問題についての選択肢が提示されているが、アメリカとの併合などあまりにも非現実的で失笑してしまう。国際政治学や経済学などの理論的な裏づけのない、そのような感情的な政策提起は薄っぺらいものでしかなく居酒屋で政治についてグチを言っているタチの悪い中年オヤジと同じ程度である。最近、ブームで質の悪い新書が増えているが、これもそのひとつだ。読んで時間を無駄にした。


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