C-MOS の C って何?

C-MOS IC とは、MOS-FET が Complementary(補完)な構成になっている IC のことです。
しかし「補完」と言われても、何だかピンと来ないですよね。 身近な例では“ Complementary Color ”が「補色」の意味になります。 2色を混ぜて白色(灰色も可)になるとき、その2色のことを Complementary な関係と言います。 光でいえば、青に黄色を混ぜると白になるので、青と黄色は Complementary な関係なわけです。

下表は、Complementary でない構成(2種類用意)と Complementary な構成を比較するために、回路図の実例を挙げて示したものです。
短い棒が縦に2本並んだところが MOS-FET で、 左に延びている線と矢印付の線の電位差が所定の大きさを超えているか否かによって、上の線と下の線が繋がったり切れたりします。

  

出力端子より GND 側に繋がっているのは N 型で、電源側に繋がっているのは P 型です。N 型か P 型かは矢印の向きで区別します。
N 型の場合、左に延びている線が矢印付の線(GND)より電圧が高く、かつ電位差が所定の大きさを超えている場合のみ「入」になります。
つまり、入力電圧が GND 付近では電位差不足で「切」になり、GND より所定の電圧高くなると「入」になります。
P 型の場合、左に延びている線が矢印付の線(VDD)より電圧が低く、かつ電位差が所定の大きさを超えている場合のみ「入」になります。
つまり、入力電圧が電源電圧付近では電位差不足で「切」になり、電源電圧より所定の電圧低くなると「入」になります。

GND 側と電源側のうち、どちらか一方を MOS-FET ではなく抵抗にした場合、以下の2つの問題があります。

 ・MOS-FET が「入」のとき、抵抗に電流が流れて、電源電圧の大きさ×電流の大きさ の電力を消費し続ける。
 ・MOS-FET が「切」のとき、負荷が出力端子と GND/電源(抵抗のない方)の間に繋がっていると、負荷の両端に供給する電圧が下がる。

GND 側と電源側のうち、少なくとも一方は MOS-FET を使って自分の両端の電圧を能動的に変えているわけですが、 その電圧に、もう一方の両端の電圧を加えると電源電圧にならなければなりません。 つまり、もう一方の電圧は、そうなるように調整しなければなりません。
その調整の仕方を「単に抵抗で結んで自然に任せる」やり方にしたのでは、上のような問題が発生してしまいます。
そういうやり方に対し、調整の仕方を相手と全く対等なやり方で、お互いに補完し合うようにしたのが Complementary なのです。 表中の回路を見ればわかるとおり、出力が L のときも H のときも、出力端子が GND や電源にのみ直付けされたのと同じ状態ですので、 先ほどの問題は発生しません。

ただし、これまで「入」か「切」の2状態しかないかのように書い来ましたが、 電位差が所定の大きさ付近では、その中間の状態になり、中途半端に電流が流れます。
そして、C-MOS IC では、入力が2〜3Vくらいのときは、 GND 側の MOS-FET と電源側の MOS-FET の両方が、中途半端に電流の流れる状態になっていて、 C-MOS といえども、電源電圧の大きさ×電流の大きさ の電力を消費し続けるのです。
ですから、H か L のどちらでもいい入力端子であっても、必ず、GND か 電源に繋がなくてはいけません。 もし未接続にしておくと、雑音で2〜3Vに保持されて、 電力を消費し続けたり劣化(電流が長い時間流れ続けることを想定してできていない)したりする危険性があります。