『12 Of His Biggest Hits』は1960年に彼の死とほぼ時を同じくして発売されたベスト盤です。発売準備は少し前から進められていたのでしょうから、本来は追悼的な意味合いはないのですが、発売から1ヵ月後に『Memorial Album』とタイトルを変えて再発売されました。現在は両方のタイトルでCDが出回っているようですので、両方買わないように要注意です。「Summertime Blues」や「Sittin' In The Balcony」などの代表曲は網羅されていますが、ジョン・レノンとポール・マッカートニーの出会いの曲として有名な「Twenty Flight Rock」が未収録なのが残念です。
一方の『Never To Be Forgotten』は、『12 Of His Biggest Hits』に漏れた曲と未発表曲を集めたものです。こちらに「Twenty Flight Rock」が入っているので、このCDはコンプリート・ベストとして楽しむことができます。
エディ・コクランと言えばザ・フーなどが「Summertime Blues」をカヴァーしたことがよく知られていますが、ザ・フー(ピート・タウンゼント)はこのカヴァー以外でもコクランの影響を大いに受けています。エレキ・ギターではなく、アコースティック・ギターのカッティングによって激しくロックするという革新的な方法論がそれです。「Summertime Blues」もそうですが、このCDの1曲目の「C'mon Everybody」にその成果が見事に表れています。一方で明らかにエルヴィス・プレスリーの真似のような曲も収められていますが、こうした彼の個性が十分に発揮されていないものまでが“代表曲”とならざるを得ないところが、彼の活動期間の短さを如実に物語っています。