当時の主流とは全く懸け離れたサウンドである。チャラチャラと軽くない。シンセじゃなくてオルガンなのである。さすがに軽めのオルガンではあるが。バックの演奏はビザークリー時代のモダン・ラヴァーズに比べると普通にプロっぽくこなれている。ベースはカーリーのまんまなんだけどさ。そのソツの無さという点から後から考えてみると『サレンダー』に音の感触が似ていると思う。当時すでに普及段階に入っていたニュー・ウェイヴ的な感覚も皆無。かといって「オールド」っぽくもない中途半端さが当時のジョナサンの立ち位置を的確に表象している。逆に言えば時代に流されていない分、他の同時代のアーティストの作品に比べて、今聴いてもサウンドが全く古びていない。いつもそうだと言えばそうなのだが。
このアルバムで好き嫌いが分かれるのは、ほぼ全曲にフィーチャーされている女性２人組のコーラス・グループ、ロッキン・ロビンスを気に入るかどうかというところだと思う。個人的には、わりとキッチリとキレイキレイに歌っているので、ヴォーカル・パフォーマンスの自由度が異様に高いジョナサンとは相性は良くないんじゃないかな～、とかずっと思い込んでいたが、聴き直してみたらさほど悪くなかった。ボビー・デイもよろこんでいることだろう。
ヴォーカルの張りは言うまでもなく、「サマー・フィーリング」「ディス・カインド・オヴ・ミュージック」「ギヴ・パリス」といった以後長期に渡ってレパートリーになる曲はもちろんその他の楽曲もかなり充実していて、パフォーマンス／クリエイティヴィティの両面から見ても、この最も不遇な時期においてさえジョナサンの絶好調は全く疑いようがない。
曲目リスト
1. いい娘じゃないか 8. レッツ・ダンス
2. クライ・フォー・ア・シャドウ 9. ルビー・ベイビー
3. 聖者の行進 10. マイ・ボニー
4. ホワイ 11. ノーバディーズ・チャイルド
5. イフ・ユー・ラヴ・ミー・ベイビー 12. レディ・テディ
6. ホワッド・アイ・セイ 13. ヤ・ヤ
7. 麗しのジョージア・ブラウン 14. カンサス・シティ
決定版ＣＤ 「ザ・ビートルズ・ファースト！」 と収録曲は異なるが、バージョン違いに
こだわりさえしなければ、このＣＤにもビートルズ参加の演奏８曲がすべて収録され
ており、お手頃といえるかもしれない。
ハンブルク時代のビートルズはポリドールとレコーディング契約を結んでおり、この
時期の楽曲についてはＥＭＩやアップルではなくポリドールが権利を有している。
