10代にしてデビューしたフランソワ・アルディは音楽的才能に加え
美貌も手伝ってモデルや女優としても活躍していました。その後突如
1968年になってステージ活動からの引退を発表し、ステージから
姿を消します。しかし、音楽活動から身を引いたわけではなく、
ライブをしない代わりに1~2年に一度のペースでアルバムを出す
という熱心な音楽活動をしていきます。その'70年台のアルディ
の1973年の傑作が本作「私小説(Message Personnal)」です。
前作「私生活(La Vie Privee)」('73)がブラジルのミュージシャン
トゥーカによるプロデュースで、トゥーカ自身の演奏も入っていた
少し異色の名作であったのに対し、同年すぐに発表された本作では
ミシェル・ベルジェをプロデューサーに迎え、ミシェル・ベルジェの
2曲を始め、セルジュ・ゲンズブールの映画音楽「ひとりだけの恋」
ジョルジュ・ムスタキの「夢物語」「愛の暮らし」等、豪華な顔ぶれ
となっています。
フランソワ・アルディ自身、ミシェル・ベルジェを絶賛していたこと
からも分かるように、本作はミシェル・ベルジェの影響が非常に強く
出た作品です。彼のフレンチポップスにカントリー風ロックテイスト
を野暮ったくならないように溶いて行く感じは、分かりやすくでも
飽きにくい、気持ちのいいポップスを創造します。そしてそれを
歌いこなすフランソワ・アルディのどこかアンニュイ(Ennui)な声。
音楽創作に没頭していた時期の濃密な作品です。29歳のアルディの
記念碑といっても良いかもしれません。是非お聴きになってください。