しかし、本当のところ、エン・ヴォーグの前にエン・ヴォーグはないだろう。それくらい、このファーストアルバムから確立されたグループだった。その後、どれほどフォロアーが生まれたやら。
TLCはあまりにエンヴォーギッシュなシーンに切り込みをかけたわけだ。しかし、エン・ヴォーグがいなければ、TLCも後のディスティニーズ・チャイルドもなかったかもしれない。
1曲目No One Gets the Prizeにはストーリーがあって、「彼女と私は恋敵同士、あの子も嘘をついたけど、私もある事無い事言ってやって、結局どっちもフラれちゃった」というおバカなストーリー。でも、ケンカしてでも好きだったんだねぇ、その人のこと。女性ならでは。2曲目はI Ain't Been Lickedは正に文字通り「舐めんじゃないわよ!」。強い、自立した女のシュプレヒコールである。3曲目のAll for Oneは、一時期コンサートの最後でよく歌っていたナンバー。急に今までのカラーからずいぶん善人になってしまうのだが、「皆のための個、個のための皆」を高らかに歌い上げる。4曲目は全米19位のヒット曲。この後のUpside downに繋がる大事な一曲になったと思う。彼女の高音が映えるディスコナンバー。ちなみに、彼女の高音の出し方は、マライアやデニース、ミニーのそれとは違うものと考える。ちゃんとライブでも出していた。
B面の1曲目(CDは5曲目)Once in the Morningも軽快なディスコナンバー。It's My House(6曲目)もシングルカットされたが、これは不発だった。可愛い感じのミディアムナンバー。SparkleとI'm in the Worldは、アシュフォード&シンプソンお得意のスケールの大きなバラード。
個人的には、続くUpside down, I'm coming outを冠したアルバムDianaがあまりに良く出来ていたので、それの影に隠れがちだが、爆発の前の予兆を感じさせる。また、他のアーチスト(ドナ・サマーやそのほかのディスコ系の人々)に迎合することなく、独自のスタイル(Love hangoverなどに代表される)を貫いたのが良かったか。