伝説的ショーロユニット「エポカ・ジ・オウラ」のオリジナルメンバー
セザル・ファリアを父に持ち、伝統的なサンバの中にショーロの息吹
を感じさせるパウリーニョ・ダ・ヴィオラ。ボサノヴァにも通じる歌声
と合わせて、ブラジル音楽の正統派ミクスカルチャー・アーティスト
といえる存在ではなかろうか。
本作はパウリーニョ・ダ・ヴィオラを取り上げたドキュメンタリー映画
「メウ・テンポ・エ・オージェ」のサウンド・トラックである。
パウリーニョ・ダ・ヴィオラの夫として、父として、少年のような心を
もつ人間として、そして、音楽家としての一面を捉えたこの映画は、
ブラジル音楽に興味のある方ならずとも一見の価値ある作品と思う。
また音楽的側面からは、パウリーニョ・ダ・ヴィオラの古くからの作品
をも取り上げた「新録のベスト盤」としての意味合いがあると同時に、
その豪華な共演者が彩りを添える作品である。とはいえ、その豪華な
共演者をしても、日常の一面に過ぎないような雰囲気を漂わせている
ところは、彼の60年の人生の重みのなすところ、つまりは貫禄なの
ではないだろうか。
興味深いので共演者を挙げてみると、まず父であるセザル・ファリア、
エルトン・メデイロス、ジョアン・ハベーロ、アメリア・ハベーロ、
マリーザ・モンチ、ヴェーリャ・グアルダ・ダ・ポルテーラ、ノ・エン・
ピンゴ・ダグア、ゼカ・パゴジーニョ。新旧様々なブラジル音楽家が
集まっている。パウリーニョ・ダ・ヴィオラの日常を垣間見ることで、
ブラジル音楽の系譜をも感じることが出来る作品といえると思う。