非常に明快な言葉と論理によって、21世紀の今日、
われわれ現代人が直面している問題点を浮き彫りにしている。
21世紀を生きていながら、その大半の人は20世紀生まれなのだから、
なかなか「歴史」化あるいは相対化できないが、それでも
目をつぶっていては、忘却するだけである。
本書は、3部から構成されている。
第1部は、20世紀の「記憶」と「責任」を扱う。
具体的には、もちろん、現代日本人が、
どのように過去の戦争に向き合わなければならないのか、
あるいはその問題を検討している。
第2部では、専門領域である、ソ連史を機軸に
20世紀の重大トピックを分析する。
しかし、その説明は、難解もしくは細かな、
事件の説明にとらわれるのではなく、
主な概念についての著者の考えを提示しているものなので、
門外漢の者にも充分読みこなせよう。
第3部は、E.H.カーの『歴史とは何か』をもとに、
歴史の方法を解説する。
本書の大きな特徴は、随所に著者のHPとのリンクがあることである。
PCの普及によって、書籍の売り上げは下り坂にあるとは思うが、
このように協力して、紙幅では充分に描ききれない部分を、
HPで補足するという方法は、これからの新しい書籍のあり方としても
重要なのではなかろうか。
特に歴史学では、容易に書き換えが可能なHPに対する信頼度が薄いが、
学者自らが率先して、そのような悪弊を打破しようということは
真に賞賛に値する。