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和書 3327241 (144)



ある軍法務官の日記
販売元: みすず書房

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著者、小川関治郎氏の実直でまじめな性格がにじみでているばかりでなく、鋭い観察力による率直な意見が書かれている資料性の高い従軍日記である。しかも、高所から客観的に見た、兵士の日記とは趣が異なる従軍日記である。 まさに発展しようとしていた上海の破壊を目の当たりにして、「日本ノ責任重且ツ大ナルコトハ言ヲ俟タザル所ナリ」(昭和13年2月13日)。あるいは、日本人町(虹口)を見て「自分ハ思フ 日本ノ力ハ只武力ニアリト言フベキカ 武力ニ於テ日本ハ世界ニ冠タルコト絶対ニ比スベキ国ナキモ武力ノミヲ以テ列国ニ対シテ何事モ強ク押切ルコトヲ得ルヤ否ヤ」(昭和13年2月14日)と問うている。 軍紀の乱れも法務官として詳しく見聞しており、かなり具体的に書かれている。 金山における村民の射殺斬殺事件は「一ツノ好奇心ヨリ支那人ヲ殺害セントノ念ニ基クトモ認メラル」とし、「前線ノ戦闘ニ加ハラズ従ッテ支那人ヲ殺サントノ一種ノ観念ニ駆ラレタルトトモ認ムベク」(昭和12年12月26日)とし、兵士の戦場での特異な心理を記述している。 一方、官僚的な面も見えている。兵士の強姦事件にも困りはてていたようであるが、憲兵の上砂(かみさご)中佐(著書に「憲兵三十一年」がある)が「近頃強姦事件不起訴ニ付セラルルモノ多ク」と苦情を述べると、「刑法一七八ニ所謂抗否不能ニ乗ズルモノ」とはいえないとはねつけている。(昭和12年12月25日)これは法務部の一般的な見解であったらしく、岡村寧次大将が「銃剣の前に親告などできるものでない」と怒って陸軍刑法を改正したというエピソードが他書にある。(稲垣正夫編「岡村寧次大将資料(上)」(原書房,昭和45年),P301) 小川関治郎氏は東京裁判で供述書を提出しているが、この部分とかさなるところがあり興味深い。(供述書は下記の書籍に掲載されている。洞富雄編「日中戦争資料集8 南京事件Ⅰ」(河出書房新社,昭和48年)P256-257) 宣戦なき戦争が国際法の解釈を難しくしていたことも本書に見られる。パナイ号事件(当時はパネー号事件と呼んだ)について松井岩根大将は日清戦争時の高陞号事件を引き合いにしているので、当時の国際法が司令官に十分理解されていなかったことが分る。(昭和12年12月28日) 氏は もともと第十軍に属したが松井大将のもとでも働いた。松井氏は独特の性格であったらしく「少シ威張ル癖アリ」と感じ、偏見かも知れないがと遠慮しながら「名古屋ノ辺ノ人」は派閥思想があるのではと観察しているのが面白い。(昭和13年12月22日) 巻末の「わが父、陸軍法務官 小川関治郎」はこの日記の意味を知る上にも一読の価値がある。今後、歴史資料としてもこの本はよく引用されるに違いない。 「支那事変」理解のために、その価格以上に十分価値のある本である。




ある農村少女の戦争日記―語り継ぐ戦争
販売元: 一草舎

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ある逃亡兵の告白―衝撃の実名手記 (ノンフィクションブックス)
販売元: 恒友出版

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ある遺書―特攻隊員林市造
販売元: 櫂歌書房

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ある銀座
販売元: 清水弘文堂書房

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ある隻脚(片足)教授の一生
販売元: 近代文芸社

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ある離脱―明治社会主義者西川光二郎
販売元: 風媒社

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ある難病患者のつぶや記
販売元: 静山社

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ある革命家の回想 (徳間文庫)
販売元: 徳間書店

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ある革命家の手記 上 (1) (岩波文庫 白 218-2)
販売元: 岩波書店

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