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幻燈辻馬車〈上〉―山田風太郎明治小説全集〈3〉 (ちくま文庫)
販売元: 筑摩書房

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本作は明治15年前後が舞台のお話。他の明治物と同様に作者の深い知識、歴史の一時代を彩り、織り成す実在、架空の人間を絡めた人間模様は見事としか言いようがないが、本作は幽霊という異質な物が普通に登場して来るのが他には無くいささか意外。歴史小説でありながらとてつもない発想。小説の天才・山田風太郎を堪能出来る。ただ前半から中盤はこれでもかというくらい面白いエピソードが次々に展開されるのだが、後半が予定調和というかいつも通りの女を襲う悲劇、そして終焉へと向かうのが少し尻すぼみな感じがした。個人的には前半のノリから見れば自由党の若者達の心理、生き様を克明に書いて欲しかったのだが、作者も文中で「主人公干潟の気持ちは赤軍派の若者を見る戦中派の気持ちだろうか」と書いている事からも年を重ね様々な経験、苦節を味わった今は「ひょろひょろの仕掛け花火」の様な前前代の老人の観点で物語が書かれているのでまあ仕方がない。だが主人公干潟の心の動きは一貫して描かれ老骨に鞭打って一旗揚げようという終わり方は戦中派の作者自身が赤軍派を仕方なくもどこか羨ましく見ていたであろう姿を時代こそ違え明治の世の主人公に自分と重ね合わせて書いている様にも感じる。最後に下巻には本書(75年発表)からは20年も前に書かれた「明治忠臣蔵」「天衣無縫」「絞首刑第一番」という傑作短編も収録されている。相馬事件、広沢真臣暗殺事件、彰義隊の生き残り藤波伊織と絞首台にまつわるお話とどれもとんでもない奇想と面白さと巧みさを持った短編です。




明治バベルの塔―山田風太郎明治小説全集〈12〉 (ちくま文庫)
販売元: 筑摩書房

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紛うかたなき天才、山田風太郎はその晩年に明治小説全集を続々刊行していく。それは全てが抜群に面白いものであった。まあ、風太郎先生の書いたもので面白くないものは皆無、その点ではかのモーツァルトにも比すべき芸術作者であろうか。

本書『明治バベルの塔』には、「牢屋の坊ちゃん」というトンでもない傑作が入っているので特筆大書しておきたい。
漱石の『坊ちゃん』が書かれて100年あまり。近年は、その登場人物の一人である「うらなり」を主人公とした小林信彦の作品も登場した。風太郎作はパロディとしての先達であるのみならず、評者は『坊ちゃん』そのものより「牢屋の坊ちゃん」を愛する。
牢屋の坊ちゃんは実在の人物であり、彼は漱石その人が松山へ赴任するのとは逆方向、当時の釧路監獄へ送られる。この坊ちゃん=小山六之助は、日清戦争の講和で来日した李鴻章を狙撃した男なのである。

本書には、その他、幸徳秋水を超絶技巧で描いた「四分割秋水伝」、牛鍋チェーンの木村荘平の破天荒な商売と人生を描いた「いろは大王の火葬場」、明治の巨魁・星享と最期の武士を描いた「明治暗黒星」などを所収。いずれも一読夢中となる怪作、傑作揃いだ。






明治十手架〈上〉―山田風太郎明治小説全集〈13〉 (ちくま文庫)
販売元: 筑摩書房

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山田流明治歴史小説の最後を飾る「明治十手架」。相変わらず面白い。あまり言う事も無い。山田風太郎の明治物を読んできた人なら同じく面白く読めます。日本最初のキリスト教教誨師、原胤昭が若い頃を回想する形の物語。構成的には悪人巡査VS心を洗われた元悪人の五人対五人の対決が出てくるので忍法物の様な作りになっています。出獄人の更正を生きがいとした原とキリスト教の洗礼を受けた美しい姉妹の悪戦苦闘、未熟さから来る悲劇、そして原に関わった極悪人達の心の動きを描いているので、テーマ的にも初期の推理物の頃と同じく人の世の理を理解して巧みな物語を紡ぎだしている。そして物語の天才、山田風太郎が暗くなりがちなテーマを見事に描いているので面白く無い訳がない。いい意味で山田風太郎の集大成的な感じもします。下巻には中篇「明治かげろう車」「黄色い下宿人」が収録されているが、この「明治かげろう車」がとても面白い。巡査津田三蔵がロシア皇太子ニコライに切りかかった所謂「大津事件」のその後を描いた物語だが、よくこんな話を思いつくなというぐらい見事です。しかし「明治十手架」と「明治かげろう車」、後者が執筆されたのは前者から30年も前なのだが通して読んでも全然違和感が無い。知らなければ同じ頃に書かれたと思う程。そして「かげろう車」の悲劇の宿命を背負い身を落としていく娘(津田三蔵の娘)と「十手架」のキリスト教の洗礼を受けた聖女の如き娘、両者の生き様は正反対にも見えるが二人とも強い心を持った清らかな存在として読者の心に残る辺り、山田風太郎の女性の描き方には感心せざるを得ない。




明治十手架〈下〉―山田風太郎明治小説全集〈14〉 (ちくま文庫)
販売元: 筑摩書房

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明治波濤歌〈上〉―山田風太郎明治小説全集〈9〉 (ちくま文庫)
販売元: 筑摩書房

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山田風太郎の明治シリーズ。上下巻になっているけれど一つの長編では無く、まさに明治という激動の時代に生きた人達の人生譚を上巻には3編収録。「それからの咸臨丸」では榎本武揚、勝海舟、そして第3者の観点の福沢諭吉を比較対象して、どの人物の生き方が好ましいかを読者に問う。福沢は榎本と勝海舟を酷評した。作者も、もし榎本武揚が五稜郭で壮絶な死を遂げていたら後の世の人々にいつまでも心に残る幕末最大のヒーローとなっていたかもしれない、いや生を選んだおかげで日本人の精神が崩壊するきっかけになったかもしれないとまで言う。主人公、吉岡艮太夫はこの物語ではさしずめ土方歳三や伊庭八郎の役割を担う。理屈と武士道精神あなたはどちらを選ぶ?そしてそれだけでは無い福沢と榎本の人間性までも推察する作者の眼力は見事。「風の中の蝶」は素晴らしい作品。この作品の主人公達、北村透谷と石坂ミナ、その弟の石坂公歴、南方熊楠らの若き日の青春群像。これ程登場人物が生き生きとし瑞々しい青春作品は滅多に無い。私が「幻灯辻馬車」で自由党の若者達の心理をもう少し描いて欲しかったという不満がこの作品で解消された。本作の主人公の一人であり26歳で自ら命を絶った明治の天才詩人、北村透谷の自由党の一員だった若き日の詩「いわず語らぬ蝶ふたつひとしくたちて舞いゆけりうしろを見れば野は寂し前に向かえば風寒し過ぎにし春は夢なれど迷いゆくえはいずこぞや」に胸が一杯になる。この詩から連想して作り上げたであろう作者の山田氏のこの明治の青春群像を描いた本作は本当に素晴らしいと思います。「からゆき草紙」はこれも夭折した天才作家、樋口一葉の生涯の中で謎とされるある行動を作者独自の想像力でミステリー小説に、そして樋口の過ごした奇跡の最後の1年を見事に描いています。素晴らしい中編集です。ぜひお勧め。




明治波濤歌〈下〉―山田風太郎明治小説全集〈10〉 (ちくま文庫)
販売元: 筑摩書房

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下巻です。「巴里に雪のふるごとく」は「警視庁草紙」では敵役となった川路利良が主人公。そして彼が明治5年に視察の為渡ったフランスでの珍道中とも言える川路どん大活躍のお話。これも川路、成島柳北、井上毅の人間性を巧みに描き、笑えるエピソードあり、ヴェルレーヌやゴーギャンやユーゴーなど(もちろんこの3人の人間性描写も見事だ)まで登場しての一大ミステリー小説になっており、当時フランスに密航や万国博覧会に派遣されてそのまま住み着いている日本人がいたりする事象や同じ時期にフランスに訪れた岩倉視察団までネタにするなど世相、風俗まで見事に描いている。「築地西洋軒」は決闘談義を皮切りに次々と登場人物の間で決闘申し出が乱舞し最終的にはドイツ女性エリスを介して、「日本人は正直で約束を守るという武士道から来る精神を皆持っている様に思わせておいて、裏を返せば皆、嘘つきで臆病で卑怯者ね」と言わせるにいたる。うん、ちょっとブラックな風刺ありだけど真実を突いているのだから唸らざるを得ない。つまりは武士道と言う物は個人の精神を統制、制御する物であり、人間本来の臆病、卑怯、その他悪徳を精神に築いたタガで防ぎ、覆い被せるという事。これは宗教の存在意義と同じ事だが、違う点は侍の宗教とも言える武士道はいわば克己という点が余分に含まれる所か。これは露骨な言い方をすれば福沢諭吉が言った様に「やせ我慢」なのです。次に収録の「横浜オッペケペ」は「幻燈辻馬車」では芝居のお兄さんと芸妓予備軍の美少女として登場した川上音二郎と貞奴のあれから15年後ぐらいのお話。葭町随一の売れっ妓、川上と結婚後、川上一座として後にアメリカのブロードウェイに立った最初の日本人女優となる貞奴に横恋慕する野口英世や友人の三遊亭夢之助(後の永井荷風)達を絡めた破天候なこれまたすこぶる面白い逸品となっている。まさに事実は小説よりも奇なり山田氏はその双方よりもっと奇なり。




警視庁草紙〈上〉―山田風太郎明治小説全集〈1〉 (ちくま文庫)
販売元: 筑摩書房

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 詳細は十分に前のお二人が書かれているので省略するが、笑った笑った。それはそうだろう、仕事の引き継ぎなんかないわけだから、二つの警察組織があった時期は絶対にあったはずで、旧の側が新の方を邪魔するのは、しごく当然であろう。
 司馬遼太郎氏の「翔ぶが如く」を読んだ後、青山墓地墓参ツアーを決行し、そのときにも行ったのだが、これを読んだ後でもう一度、花見を兼ねて川路大警視の墓参りをし、墓前で一献傾けてきた。苦労したよね、この人(笑)。




警視庁草紙〈下〉―山田風太郎明治小説全集〈2〉 (ちくま文庫)
販売元: 筑摩書房

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上巻から通しで事件のからくりもさること乍、この下巻は特に人物のひとりひとりが男女問わず恰好いい!(まあまあ‥救いようのないような人もいるけれども)
実在の人物が多く出てくるので、誰がいつどこで死んでしまうかわかっている人などには、その恰好良さが切ないことと思います。
あと通行人のように有名人が出てくるのもニクいトコロ。
「あんたこんなところにいたのか!でも全然注目されてない!(笑)」と。

それからこれは、登場人物について調べたくなるので困ります。
調べなくてもまったく楽しめるけれど、楽しかったからこそ調べたくなってしまう。
とりあえず柴五郎は調べました!
川路大警視は論文を書こうとして断念しました…


あ、私『るろうに剣心』から斎藤一が気になったクチだけど、この斎藤一も大好きです!(笑)




妖怪・妖精譚 小泉八雲コレクション (ちくま文庫)
販売元: 筑摩書房

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これまでにハーンの本は(特に『怪談』は)幾つもの邦訳が出て来たし、既に定評のある味わい深い名訳もあるのに、また新訳かと思って読んでみたのだが、最初の一篇を読み終える頃には、それまでの他の訳のことなど頭から綺麗に吹き飛んでしまった。とにかく訳がうつくしい。「美しい」ではなく「うつくしい」と書きたくなる程うつくしい。基本的にですます調で、著者が読者にやさしく語り掛ける様な文体を採っているのだが、これがまたえもいわれぬ独特の雰囲気を作り出している。単に文章を置き換えるのではなく、そこで新たな作品へと深化させてくれる翻訳と云うものは本当に稀なものだが、本書は間違い無くそうしたタイプの名訳だと言える。

収録作品の選定も実にいい。ハーンの再話文学が『怪談』でひとつの頂点を成すのは確かだとしても、それに至るまでの、負けず劣らず素晴らしい昔話の数々は得てして文庫本等では軽視されがちなものである。本書ではテーマ別に分けて比較的広い年代の作品を集めて来ているのだが、ハーンの、人と世界の向こうに永遠を見る眼差しが素直によく解る構成になっている。ポリネシア、フィンランド、中国、インド等々、ハーンが再編した世界各地の神話伝説と云う、恐らくは一般の読者は知らないであろうジャンルが手軽に読める様になったのも実に嬉しい。ハーンの文学が『聊斎志異』や『千一夜物語』に匹敵する業績だと云うことが、本書を読めば実感出来るだろう。




吉行淳之介エッセイ・コレクション〈4〉トーク (ちくま文庫)
販売元: 筑摩書房

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対談の名手として定評のあった吉行氏の、そのエッセンスが読めるということで期待したのだが、どうもすっきりしない。

そもそも、比較的最近行われたタモリや中島みゆき相手の対談と、若き日の立川談志との対談を同じ巻に納められても、落ち着かないのだ。多岐に渡る吉行氏の対談の記録、ここは、時代を区切るとか対談相手を限定するとか、ある程度テーマを絞って編集するべきだったのではないか?
まあ、一番良いのは、”吉行淳之介対談全集”の刊行だろうが。


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