私の大好きな作家でもうひとりドストエフスキーがいますが、こちらには全集まではお勧めしません(といっても、好きな人ならどうしても全作品を読もうとされるでしょう)。ドストエフスキーはシェイクスピアとは違って、自分の興味ある問題(だけ)を徹底的に掘り下げるタイプの作家です。乱暴な言い方ですが、彼の小説にはどれも似通った登場人物たちが登場し、同じようなテーマを巡って展開していきます。ですから、彼の場合には全作品をくまなく読むよりは、その小説群の中でも特に優れたもの、5大長編、特に「罪と罰」「悪霊」「カラマーゾフ」(プラス「地下室」)などを繰り返し読むほうがずっと意味があると思うのです。
シェイクスピアは違います。シェイクスピアにあっては、作品ごとに強い個性を持っていて互いに余り似ていないので、ある作品のニュアンスを他の作品で代用させることはまず不可能です。その描写のパースペクティヴ(遠近法)は驚くほど多彩です。有名でないから無視していいというような作品を、シェイクスピアはひとつも書いていないのです。
もしシェイクスピアに興味を持たれたら、文庫本などでめぼしいものを読んだところで終わりにしないで、是非そのまま全集に挑戦してみてください。専門家でもない私(たち)が全集で揃えておきたい人がいるとしたら、シェイクスピアこそがまさにそれです。
初めて読んだ青い鳥が若月さんの訳したものでした。
小学校5年くらいだったと思います。
そのあと、忘れた頃に青い鳥を別の方の訳書で読みましたがピンときませんでした。
私の中の青い鳥は若月さんの青い鳥だったのです。
戯曲で書かれたこの本は、さまざまな物の精の服装や、性格の想像などが容易にでき、頭の中ですぐに浮かんできます。
また舞台設定なども書かれているので、情景なども思い描くのが本当に楽しいです。
大人になった今でも時々繰り返し読んでいます。
最後の光や、その他の精とのお別れが悲しくて、また最初に戻ってしまうことも……
数ある青い鳥の物語ですが、若月さんのこの戯曲本をぜひ読んでみて下さい。