本書の失敗は、ソフトの使い方と JavaScript の基本を取り込んだことでしょう。前者は無用であり、後者は初級者のニーズに対応しません。JS は「すぐ使えるサンプル集」などでお茶を濁し、HTML と CSS の解説に注力すべきでした。全機能解説を謳いながら HTML と CSS の解説には省略が多く、初心者向けの嘘とごまかしにあふれています。内容を鵜呑みにしても今すぐに致命的な問題は生じませんが、後々アクセシビリティや SEO といった高度な問題に取り組む際には、1から勉強し直すことになります。私は本書を勧めません。
本書の購入を検討している入門者の方には「できるホームページHTML入門」を、ステップアップ用の本を探している方には「HTMLとスタイルシートによる最新Webサイト作成術」「ひとりで作れるホームページHTML入門」をお勧めします。
(1) HTML/CSSの基本的な事項がだいたいわかったつもりぐらいになっており、HTML/CSSをもっと高度に学びたいという意欲があること。
(2) ソースを直に見ることが嫌でないこと。
(3) クロスブラウザ対策に興味のあること。
(4) クロスブラウザ対策に興味はなくともW3C標準という「正統性」へと接近したいという動機があること。
とりあえず、パっと思いつくのはこのぐらいでしょうか。(私の場合は、1 ○ 2 ○ 3 ○ 4 × です。)
私はHTML/CSSに触ってから7年目になるので基本的なことはほぼ覚えた気でいましたが、正答率は80%止まりぐらい。だいたいわかっているとも言えますが、まだ20%近く知らないことがあったというのが驚きでした。
一部、「いくらなんでもそれはW3Cイデオロギーでしかないのでは…」と思うような問題(例えばtext-transformプロパティや、qタグに関する部分などはちょっとついていけない…)もありましたが、インライン要素/ブロック要素の使い分けのきちんとした記述など、実践的なレベルで役にたつ部分も少なくありません。
中級者以上にはオススメです。
まるっきりの初心者にはまずはHTMLが「緩く使える言語」であることの素晴らしさを享受してもらってから、こういう世界もあるのだということを認識してもらう程度でいいと思います。
裏ワザという言葉から何を想像するかは人それぞれでしょうが、本書は HTML/JavaScript/CSS を用いた Tips を 205 種類紹介する本です。デザインの中核を担いうる実践的なテクニックは僅かです。「タグ屋」と呼ばれるジャンルの Web サイト群で紹介される例が多いお遊び用途の単発 Tips が大半ですから注意してください。プロの方よりも、趣味の個人サイト製作者に向いています。
作成手順→技術解説→サンプル改造例のステップで、裏ワザテクニックの正確な理解ができる、というのが本書の売りです。しかし紙面ではしばしばキーポイント以外の記述が省略されています。必ずサポートサイトからサンプルをダウンロードして、ソースを確認してください。本書のタイトルを Web で検索するとサンプル集が見つかります。購入者以外でも閲覧できるので、事前に内容を確認されることを勧めます。
本書は眺めている分には楽しいのですが、そもそもここで紹介されているような Tips を閲覧者が喜ぶかどうかは疑問です。技術は使いようなので、うまくすれば役立つものとなりますが、安易に取り入れるとつまらない結果となりかねません。また、HTML や CSS の正しい使い方を学ぶ前にこうした応用編に飛びついてしまうのも危険です。よく考えて、活用してください。
本書の特徴は、解説編とリファレンス編がほぼ同じ分量となっていることでしょう。本の厚さといった観点からは否定論もありましょうが、使ってみれば意外に便利で、面白い構成だと思います。読んでみるとパッと見の印象よりも文字量が少なく、解説編はすいすい読めます。解説編のページ数は類書と比較して決して多くないので、最初から最後まで通読することを勧めます。
本書の欠点は、端的には解説内容の不足です。ブロックレベル要素とインライン要素の区別、要素の入れ子規則など、重要な解説がありません。サンプルをよく検討すればひどい間違いは犯さずにすみましょうが、不安は残ります。また「構造と装飾の分離」という HTML4 の大方針についても概念を示すのみで、解説と十分にリンクしていません。今後の課題、として投げ出しているのです。
本書はよい本ですが、入門者なら「できるホームページHTML入門」を、初級者なら「HTMLとスタイルシートによる最新Webサイト作成術」を同時に検討されるとよいでしょう。