同じアメリカ人でも、W・シャイラーだと、時間がそれほどたっていな
いため消化しきれてない部分が感じれるが、トーランドの本では、より
冷静に、かつ客観的に記述されている。
反面、ヒトラーについて哲学的・歴史的な考察が弱い。また、ヒトラー
のパーソナリティに主眼を置いているため、第二次大戦の戦争指導その
ものについてはそれほど深く入り込んでいないぐらいが不満か。
彼を恐れる必要はもう無い。
だからこそ我々は彼を知る必要がある。
筆者の忍者に関する意見について、大きく僕の観点と異なる点は2つある。1つ目が、忍者が日本人だけでなく、外国人、さらには宇宙人にも忍者がいるという説を採っている点だ。そのために、大量の資料を示してその根拠を述べている。
2つ目が、正忍記に書かれているような忍者の戦術に関する記述を否定し、忍者は超能力者であり、様々な幻術を使ったに違いないと述べている点だ。
この本の致命的な弱点は、理論物理学者らしく、理論を述べる場所があるかと思えば、空想に浸っているところもあり、話もまったく一貫性がないため何を言いたいのか非常に分かりにくくなっていることだ。筆者自身も構成がおかしいのは理解しているようで、「一貫させるほどに整理されすぎた頭の科学者ならば、もはやその人には、発明や発見は無理だということになる。」「乱雑な思考が、いろんなパターンで、入り混じってくるから、面白いことを発見できるわけである。それを大事にしていると、こんなふうな本になってしまうのである。歴史が出たり、科学が出たり、論文になったり、史料集になったり、タイム・トラベルをしたような思い出話が出てきたり、書き進めているうちに、自分でも頭がおかしくなったのかと思うようなことが次から次へと出てくる。」などと言っている。題名がラビリンス(=迷宮)と名づけたりと、開き直ってさえいる。
結局この本の結論は、「忍者は超能力者である。」ということらしいが、ブログで書くならまだしも、1900円もする本に出版するなら、もう少し、筋道を立てて書くべきである。筆者がいろいろなことを知っているということは分かったが、単に知識の羅列にすぎず、ちっともおもしくない。
この本はその「中間調査発表」である。遺跡発掘の全てがわかる本である。
考古学者は何を考えて遺跡を選ぶのか?どのように掘り進めていくのか?
得られた遺物の解釈は、そしてその年代推定は?すべてが実に面白い記録である。
学問的に極めて正統な手法で調査が進められているのが、門外漢の私にも
理解できる。余りに生真面目すぎるのが、ただただ尊い。この学問への誠実さ
には頭が下がる。壮大なスケールの学問体系がこの世の中にはあるのだなと、
圧倒されてしまう。
著者を初めとする日本人5人の調査隊、そしてその資金をこれほどの長き
に渡って援助し続ける日本の企業。学問的にそして精神的に事業を支えてきた
皇室関係者。全てが、なんと誇らしいことか。