これまでに著者が診てきた患者が残していった言葉や
その心理的背景、また、医師として感じたこと、
これでいいのか、よかったのか、と疑問を感じた
エピソードなどが数多く紹介されており、
現代医療が抱える問題点や、患者の立場を考えた
医療とは何かを読者に問いかけている。
また著者は、より良い医療を受けるためには、
患者自身にも病院や医師の良否を見極める力や、
自分の病気についての正しい情報収集が不可欠である
ことを主張しており、そのような患者の姿勢が
医療の現場にもフィードバックされ、
良い医師や病院を育てることにもなる、
という意見を述べている。
つまり、医師が絶対的な権力を持ち、患者はそれに
従っていればよいという、医師が神格化した従来の
一方通行的な医療の時代は既に終っており、
患者の意志や権利が重要視される時代に変わりつつ
あることを本書は示している。患者は自分の人生観や
価値観、治療への要望などをきちんと医師に伝え、
医師もまた、その要望に沿った医療を提供する、
そういった「双方向の密な意思疎通」こそが本当の
意味での「インフォームド・コンセント」であること
を、著者は訴えている。
本書は一般の人(患者)を対象に執筆されたもの
ではあるが、医師が読んでも色々と考えさせられる
ことが多いのではないかと思う。
医療のあり方に興味を持つあらゆる人に
一読をお薦めしたい本である。