和書 508066 (380)

封神演義 完全データファイル―英雄・仙人・宝貝の秘密を大公開 (青春文庫)

幹になる男、幹を支える男―この「絆」が歴史を動かした (青春文庫)

　童門氏の作品は日本史における大小のリーダーシップや自己犠牲の美徳を描き出す点に特徴があると考えます。本書でも織田信長と家臣団や後醍醐天皇と楠木正成、藤田東湖とその影響を受けた者達、を題材として彼らの生き様を魅力的に描き出しています。しかし、なぜ、そうした利害を超えた主従関係、あるいは自己犠牲が生じ得たのか、という問題に関してはほとんど触れられていません。唯一、その点に触れた「はじめに」でも、「「その気にさせる」ものは何か、と言えば、「誠実さ」以外何もない（P. 5）」とのみ記しています。大事をなす際のリーダーの重要な要件に「誠実さ」があることには同意しますが、室町時代の守護・地頭と豪族との力関係や江戸時代の家制度等の背景となる社会システムへの評価が軽すぎるきらいがあります。結果として、「現代において個人の危機管理が重要になってきたことを背景にリーダー（幹）と支える者たちの関係について温故知新することが大切ではないか」という問題設定を暗に行っているにも関わらず、「歴史的には上記のようなケースがある」と示して終わってしまう本なのです。

　「はじめに」で童門氏は「（ヒューマニズムは）現代、もっとも必要とされ、しかも日本人のだれもが自分の内にもち、それでいてそれを外に出すことをためらい、渋っているものを、この本に例示した歴史上の人物たちは、躊躇することなく噴出させた（P. 5）」と述べています。しかし、歴史上の人物でもヒューマニズムを発揮した人もいれば、しなかった人もいます。現在でも同様です。だからこそ、ケーススタディする必要があります。その意味で、踏み込みが不十分な印象を持ちました。

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