それが本書を読むことにより、疑問符が頭の中に湧き上がる。
センセーショナルな報道に、真実が見えにくくなってしまう。
それがマスコミの宿業ともいえそうだが、だからこそ本書のように冷静に分析した書籍も必要なのだ、と改めて感じました。
それが本書を読むことにより、疑問符が頭の中に湧き上がる。
センセーショナルな報道に、真実が見えにくくなってしまう。
それがマスコミの宿業ともいえそうだが、だからこそ本書のように冷静に分析した書籍も必要なのだ、と改めて感じました。
番組に登場するのは77歳の夫と66歳の妻です。老人性の痴呆症と診断された妻は、夫の懸命の介護にもかかわらず、やがて徘徊するようになります。自治体の特別養護老人ホームに妻と一緒に入りたい、と申請しますが、介護を必要としない人は入所できない規則です。それにたくさんの希望者が待機しており、たとえ妻一人を申請しても、すぐに入所すること自体が難しいのです。一方で夫婦で入所させてもらえる民間の老人ホームは非常に高額で、この夫婦には手が出ません。
夫一人の力ではどうしようもない事態になってしまい、近くに住む息子夫婦は、両親の様子を見かねて二人を引き取りました。
しかし、同居をはじめてからわずか4ヵ月後に、二人は遺書を残してこの息子の家を出て行ってしまったのです。
こうして、病の妻を連れた二人だけの旅がはじまりました。それは、死を覚悟しての旅でした。二人は故郷近くまで行きましたが、捜索願いが出されていることを恐れてか故郷には寄らず、宿にも偽名で泊まりました。その後も故郷を遠巻きにするようにして温泉を転々とします。実名で宿泊して「もう東京に帰ろう」というそぶりを見せたりもしたのですが、とうとう25日目に二人で入水してしまいました。
人に迷惑をかけずに穏やかに二人だけで暮らしたい……そんな老夫婦のささやかな願い、現代はそうしたお年寄りの願いさえ踏み潰していく社会なのでしょうか。と「あとがき」は結んでいます。
少子高齢化社会を迎え、この問いかけは「アーカイブス」に閉じ込めておける問題ではなくなっています。