アルトのためのカンタータである第54番「罪に手向かうべし」が、このCDの白眉だ。一度聞いたら忘れられないような印象的なアリア2曲とレシタティーヴォから構成されている。ここでの米良の滑らかで軽やかな歌声は、実に素晴らしい。ただ、艶やかな高音と凄みのある低音の声質が違って聴こえる部分があるので、そこに違和感を感じる方もいるかもしれないが。第162番の二重唱での米良と櫻田の声の相性の良さは、聴いていて陶然となる。
ソプラノの栗栖とバスのコーイも万全の歌唱を示し、深みのある器楽合奏の音色も、柔らかな響きのコーラスも、実に質の高い出来栄えだ。
第146番(アーノンクール)・・・チェンバロ協奏曲BWV1052が好きな方なら聴き逃せない作品。冒頭シンフォニアはBWV1052の第1楽章(ソロはオルガン)、続く合唱は第2楽章の音楽が使われている。演奏は豪快で勇壮。タヘツィのオルガンも見事である。
第147番(アーノンクール)・・・コラール(2回出てくる)がとりわけ有名な、録音数も多い人気曲。第140番同様、アーノンクールは持ち前のアクの強さをここでは控え、やや遅めのテンポで穏やかな演奏を繰り広げている。アルトのソロは少年が担当していてなかなかの健闘だが、やはりエスウッドのソロで聴いてみたかった。
第156番(アーノンクール)・・・簡素な編成だが、死に臨む者の思いを歌う詞が切なく心に突き刺さる傑作。冒頭シンフォニアは協奏曲BWV1056の第2楽章の音楽(ここではオーボエ・ソロ)。演奏は歌詞の内容にふさわしい、清潔でしっとりとした味わいだ。
第159番(レオンハルト)・・・「ミニ受難曲」の趣きがある作品。第4曲のバス・アリアは短いが心にしみる名曲。レオンハルトも真摯な演奏でこの曲の魅力をよく引き出している。ソロを受け持つソプラノの少年、アルトのエスウッド、バスのエグモントも好演。
第161番(アーノンクール)・・・バッハのヴァイマール時代の曲で、死へのあこがれをしっとりと美しく歌い上げる傑作。2本のリコーダーの可憐な響きが印象的。第1曲のアルト・アリア、第3曲のテノール・アリアでエスウッド、エクヴィルツ両者が安定感のある名唱を聴かせてくれる。