和書 467252 (150)

幸田文全集〈第9巻〉駅・栗いくつ

幸田文全集〈第4巻〉さゞなみの日記・包む

その中で「六羽」は、後の幸田文独特の世界を感じさせる。女友達と庭を見ていたら数羽の鳥が飛び立った。それについて二言三言言葉を交わした、というだけの種ながら、背後になにか別のものが透けて見えるようで、本を閉じたあとにも自分の中に「考える種」が残る。

この巻の主たる「さざなみの日記」には、娘の感情に踏み込んだ親子の日常が描かれており、貴重。

幸田文全集〈別巻〉作品補遺・書簡・斑鳩の記

幸田文全集〈第11巻〉雀の手帖・男

同時期の作品なのに「男」は固い。のびがない。
根っこに材料をもたない文章という気がする。
そういうよくない点で動物園を描いた作品に似ているかも。
題を与えられての作文が苦手なのかしら？と思ったり。

「はなむけ」では、娘が結婚し、旧住まいを開けて娘夫妻に譲る喜びを書いている。
が、この文の後、新しい洋風建築になじめず、結局著者は娘夫妻と家を取り替えてもらって古い住まいに戻るのだ。そのことをさばさばした文体で書いたのをどこかで読んだことがあるが、あのそっけない乾いた調子は娘夫妻に古い家を受け取ってもらった喜びを払うためのものだったか、と思う。
また娘のはなむけの言葉「楽しくしている母さんを見ていきたい」という言葉から「木」への執着を新たに受け止めた旨が記されている。母の添え物と見られがちな娘だが、母の根を支えていたものは娘であったのだ、と青木玉さんへの認識を新たにした。彼女の言葉から、「木」が生まれ、「くずれ」が生まれたのだ。

「藤の花ぶさ」。
池の傍の満開の藤を見ているうちに、思わず知らず私は池の中に踏み込んでいた。
何かが始まりそうで始まらない、薄ら寒い感触の小品。

幸田文全集〈第12巻〉動物のぞき・あじの目だま

後半は著者のいう「雑文の寄せ集め」だが、文章にゆとりがあり、反芻して楽しめる。この巻の作品の時期、著者は還暦前だが最盛期の迫り来る探究心の前の静けさ。
「ながあめ」には特に心ひかれる。
先日傘を注文するのに顔映りの良い布地が見付からず苦労したので、一入。

幸田文全集〈第16巻〉闘・しのばず

雑文の中の「しのばず」は下町のあるじを訪ねての記。
「うえの」という雑誌の連載記事での規格だそうだ。
鳶の頭夫妻、つなぎ竿（きっとへらぶな釣り用だろう）、老舗の櫛屋の話など、和のものに興味のある人はきっとおもしろく読むと思う。

幸田文全集〈第17巻〉きもの・ひょうたん

幸田文全集〈第18巻〉おんな十二カ月・くらしのうちそと

幸田文全集〈第1巻〉父・こんなこと

幸田文全集〈第23巻〉雑編・補遺、年譜、著作年表