三巻では車、鉄道、船にまつわる現代民話が集められている。
その中でも多いのは怪談の類の話しである。
車に関するものは都市伝説としてどこかで聞いたことがある話だったが
狸や狐が鉄道に化ける話や船幽霊の話はあまり聞いたことがないだけに新鮮だった。
また人力車をつかまえる幽霊の話が
現代においてタクシーを拾う幽霊の話にかわっていくことにも
時代のうつりかわりが怪談にも影響を与えることがわかって興味深い。
ただ決してホラーやオカルトがかったものではない。
すべてが淡々とした人々の生きた「語り」として
伝えられているところに新鮮な感動を覚える。
夢に事故を見て、実際にその光景にであったために助かった人
夢で親しい人の死を知った人
夢をとおして頼みごとをされる人
人が死んだときに火の玉を見た人
死んだ人の魂とすれちがった人
生と現実がわれわれにとっての「表」なら
「裏」は死と夢であろう。
それらは現代世界ではあまり真摯に語られることはない。
しかしあまり語られないことにこそ
重大な何かが潜んでいるのではないか
テレビやコンピュータに流されている私たちだが
!口承文化というのは決して失ってはならない。
そう考えさせる一冊であった。
この第六巻はあまりに重い。
特高による思想弾圧や銃後に生きた人々のつらさ、
飢えと食糧難、空襲下での生と死、原爆や沖縄戦の悲惨
引き揚げにおける多くの悲劇など。
この本を読んだ私たちがなすべきことは
きっとこの体験を次の世代に語り伝えることなのだろう。
なぜなら、一番強く人の心を揺り動かすのは
優れた学説や立派な演説ではないからだ。
名もない市民一人一人の個人的な体験こそが
人の心と世界をうごかすのだと私は信じたい。
戦争を経験した事の無い世代にとって、胸が痛む…しかし口伝として何年でも風化させる事無く伝える事実として大切な項であると私は考えます。
怪談のみでなく子供達の銃後は是非目を通していただきたいと思います。