① 弧長表示された曲面上の測地線の方程式が、曲面上の作用積分のオイラー・ラグランジュ方程式と同値である事の証明(命題4.1.9)
② 直接法による最短測地線の存在の証明(4.5.3節。特に、区分的C1級の測地線が、自動的にC∞級になるという事実は初めて教えられた)
③ 線形常微分方程式と安定性の議論(特に、命題4.7.7と、それを用いた懸垂線の安定性の議論がステキである)
④ 一般の曲面について、法方向の変分ベクトル場をV=vνとすると、平均曲率の変化率は、2Hs= -△v +(4H2-2K)vで与えられる(補題5.4.1)。この公式を基に極小曲面の安定性(および、ヤコービ場の理論)が展開される。
⑤ 回転面の安定性の議論(5.7節すべて)。特に、球面の安定性を示す5.7.1節の議論は構成的でスバラシイ。一方、回転面の安定性は2つの2次形式に帰着されるが、これを4.7節の安定性に帰着させる議論はかなり難しく、私自身クリアにフォローできていない。
最後にひとつコメントして終りとしよう。
はじめにも述べたが、この小磯先生の本は、幾何学的変分問題のまさしくルーツを扱っており、Jacobi場の比較定理の原形である「Sturmの比較定理」(同書、定理4.3.16)や上の③で述べた「常微分方程式と安定性の議論」と「Sturm-Liouville型の境界値問題」との関連に、この分野のパイオニアの一人であるSturmの業績の大きさを認識する事が出来ると思う。
と思うと次は微分方程式の基礎論の証明と解説に当てられる。
微分方程式の基礎定理を他の本でレビューしてない僕には最初
辛くて読み切れずポントリャーギンでフォローしました。
ポンとリャーギンの方が証明も丁寧で例もわかりやすいので(力学に直接関係していなくても)それを見ながら勉強しました。
と思うと、なんだか、無理にLie代数やら何やらの言葉を隠しながら
同じ事やってる、みたいな事が結構続きます。
正直な所、微分形式の導入や変分原理の導入もArnoldの方がしっかりしていて
かつ簡潔でわかりやすい様に僕は感じました。
Lie微分の説明も多様体論の本で軽く眺めた方が良い様な後々、しっくり来る感じがしました。
可積分系に行くまでにはスタミナが切れました。
駆け足をする本の様に感じました。
一度、微分方程式の数学書(応用数学ではなく)と解析力学を学び、かつアーノルド
や多様体の本を併読していくくらいじゃないとなんだか通読は厳しいんじゃないかと僕には思いました。
このシリーズには微分方程式の本がこれしかありませんが、
正直、きついの一言です。微分方程式の本じゃないです。
これで死んでしまったなら岩波から出ている高橋先生の
「力学と微分方程式」
をまず読んでおくと助けになると思います。
後々役立つんだろうという確信はありますが、ちょっと通読はきついです。
コンテンツをそれぞれ一冊の本でやった方が遠回りの様で近道のような気がします。
一冊にこれだけ豊富な話題を証明付きで与えているんですからレビューにはいいかもしれませんが。。。
ただし内容は徹底した論理的な議論により構成されており、ページ数も400ページを超えるものなので、文系の学生、または工学系の学生には少しきついかもしれません(論理が中心で計算問題などはほとんどありません)。しかし数学科の学生で、微積をきちんとやろうという人なら、この本はとても頼りになる本です。
本の最後の方に、20ページくらいベクトル解析の話が出てくるのですが、これはあまり役に立たないようです。なにせ20ページに曲線、曲面積、線積分、面積分、発散定理、ストークスの定理を詰め込んでいるので、初学の人にはキツイし、ベクトル解析をある程度学んだ人にとっては物足りないと思います。