昔話によくある、お願いをして、それがかなっていくストーリーですが、ちょっと意表をついたアイテムを使っています。絵も和風でいい感じ、この絵は子供が書いたの?と娘に聞かれました。大人が書いた、と答えましたが、本当はどうなのでしょうねえ。
まどさんの詩は言うまでもなくすばらしいけれど、
それをさらにひきたてているのが、天才、スズキコージの絵なのである。
詩にそえられた楽しいコラージュ(貼り絵)によって、
ことばがいきいきと、自由におどっているように見えるから不思議。
この絵本には4つの小さな詩が入っているけれど、
「くしゃみがねてた。はなのなかにさんにん」で始まる、
「くしゃみのうた」なんて、親子で大笑いしてしまった。
言葉の面白さ、楽しさを感じることができる、おすすめの1冊!
でも、その絵を並べたものに、
どうして谷川俊太郎の詩をのせたのか、その意図が理解できません。
たとえば谷川俊太郎自身が一緒にイラクに行って、
現地の子どもたちとふれあい、そこから何かを感じて詩を書いた
というのなら、意味はあるでしょう。
でも、この本はそうではありません。
谷川俊太郎の詩は旧作からの抜粋にすぎません。
詩の言葉ひとつひとつには力があり、
国や時代がちがっても、変わることのない戦争のおろかしさや
人間のかなしさが胸にひびいてきます。
「人間としての思いは同じ」という意味で、谷川俊太郎の詩と、
イラクの子どもたちの絵を組み合わせたのかもしれません。
でも、どうしても、
谷川俊太郎という大詩人のネームバリューで話題を集めて、
イラクの子どもたちの絵を、さし絵程度にしか扱っていない、
という印象はぬぐえません。
掲載されている絵はあまりにも数が少ないし、
ひとつひとつの絵に添えられた言葉も、内容が薄すぎます。
実際に戦争で被害にあっているのはイラクの子どもたちです。
必ずしも戦争や悲しみを描いた絵ばかりではなく、
楽しい絵もあり、とても載せられない下手な絵もあったでしょうが、
そのままの絵を主役として見せてほしかったと思います。
大詩人の言葉を借りて、「戦争の悲しみ」というテーマのもとに
編集してしまっては、かえってイラクの現実が見えなくなって
しまうのではないかと思います。
わたしは、谷川俊太郎氏の詩は好きだし、
イラクや中東の世界も大好きです。
だからこそ、このような中途半端な企画本は、正直言って残念です。